土木現場の衛星測位環境評価

測位衛星の位置は時々刻々と変化します。土木現場で活躍するICT建機を効率的に運用するためには、衛星測位環境を予測することが重要です。

衛星測位とは

GPS/GNSSなど地球を周回している人工衛星の電波を使い、位置を推定するものが衛星測位です。スマートフォンで地図を開くと位置が分かるのも、衛星測位などが使われているからです。

世界各国が運用している色々な測位衛星があり、ここ10年ほどで衛星数が飛躍的に増加しています。

衛星システムと運用衛星数の進化

図: 衛星システムと運用衛星数の進化


これだけ沢山の衛星があったら、どんな場所でも衛星測位がうまく出来るのではないか?
そう思われる方も多いと思いますが、上空に遮蔽がある環境だと上手く行かないケースもあります。

衛星測位には様々な測位手法があります。位置を数メートルくらいの精度で推定する単独測位と、基準局による補正情報を使ったDGNSS、位置を数cmくらいの精度で推定するRTK-GNSSがあります。

表: 衛星測位手法の種類

衛星測位手法の種類

ICT建機などでは精度が高いRTK-GNSSが使われます。


ICT建機

衛星測位を使い、作業を補助するマシンガイダンスやマシンコントロールに対応した建機が普及しつつあります。

RTK-GNSS(Real Time Kinematic-GNSS)

RTK-GNSSは基準局で観測した情報を補正情報として使い、移動局の位置を高精度に推定する手法です。基準局を自分で立てて移動局に補正情報を送る構成や、仮想的に基準局の情報を取得する構成などがあります。

RTK-GNSSのイメージ

図: RTK-GNSSのイメージ


移動局は受け取った補正情報と観測した情報から、両方で観測された衛星を探して、観測データの差を計算します。差を計算することで、移動局と基準局の観測情報に共通に含まれている誤差が相殺されます。

RTK-GNSSでは電波の搬送波の位相の数を推定して、正確な位置を推定します。そのため信号が強く、安定していることが重要です。都市部や山間部、地形の起伏が多い場所では建物や地形の影響により、RTK-GNSSが使えなくなることがあります。

RTK-GNSSのイメージ


構造計画研究所では、衛星測位環境の予測技術を開発し、RTK基準局設置に関する解析や測位実験の分析などを実施しています。

検討内容例 RTK基準局の設置検討

RTK-GNSSでは基準局と建機などに設置した移動局の共通衛星を使い、測位を行います。信号品質が良い共通衛星が多い方が、より安定したRTK-GNSSとなります。

土木環境の衛星数の評価

土木環境では、地形、樹木や構造物などが、測位衛星の信号や基準局からの無線通信の遮蔽の要因となります。たとえば、空を見上げて遮蔽が多い環境は、RTK-GNSSに影響があると考えられます。詳細な状況を分析して、計画的な工事を実施する場合、シミュレーションによる環境予測が有効です。

シミュレーションのイメージ

図: シミュレーションのイメージ

山間部の評価

地形データ、樹木データなどのDEM(Degital Elevation Map)を使い3Dモデルを作成します。衛星の軌道予測を行いRTK-GNSSの可用性を評価します。

河川部の評価

地形データ、樹木データなどのDEMと橋梁の3Dモデルを使い、RTK-GNSSの可用性を評価します。

都市部の評価

地形データ、建物データなどのDEMと3Dモデルを使い、RTK-GNSSの可用性を評価します。使用する3Dモデルは変わりますが、いろいろな状況に対してシミュレーションが可能です。


RTK基準局設置位置の検討シミュレーション

ある山間部の現場で、上空視界が良さそうで電源が設置できそうな、RTK基準局を建てられそうな場所が2箇所あったとします。RTKの補正情報は2.4GHz帯の無線LANで、ICT建機を運用するエリアに送信するとします。

RTK基準局1と2のカバレッジエリア

図: RTK基準局1と2のカバレッジエリア


どちらにRTK基準局を建てるかによって、RTK補正情報を受信出来るエリアが変わってくることが分かります。RTK-GNSSを使用したいエリアによって、RTK基準局を切り替えることも考えられます。

このシミュレーションは構造計画研究所で取り扱っている、電波伝搬解析ツール Wireless InSiteを使用して実施しました。


RTK-GNSS運用時間の検討シミュレーション

エリア内で、品質の良いGNSS衛星の信号が何機くらい受信出来るかシミュレーションで推定してみます。

RTK-GNSSに使える衛星数の変化

図: RTK-GNSSに使える衛星数の変化


この例では0時と14時の衛星数を推定しています。この計算例ではどちらの時間帯も十分に使える衛星数が多く、RTK-GNSSが可能そうであるということが分かりました。

このシミュレーションは構造計画研究所で開発中のGPS-Studio FASTを使用して実施しました。

建機搭載測位モジュールの更新の検討

対応測位衛星による違い

GPS/GLONASSに対応しているモジュールが殆どでしたが、マルチGNSSモジュールも増えてきています。必要な機器の検討にも、シミュレーションによる環境予測が有効です。

図は遮蔽が多い都市部でRTK-GNSSに使える衛星の数を色で示しています。衛星の配置は時々刻々と変わります。シミュレーションによりどれくらい使えそうな時間があるか把握すると便利です。

対応する測位衛星システムによる衛星数の評価

図: 対応する測位衛星システムによる衛星数の評価

GPS-Studio FAST

構造計画研究所では、衛星測位の分析ツール GPS-Studioの開発に取り組んできました。GPS-StudioはGNSSの研究者・技術者にご愛顧いただいておりますが、それをより簡単、手軽に使えるように、改良したものがGPS-Studio FASTです。

GPS-Studio FASTとは

簡単、手軽に測位環境の予測をするソフトウェアです。

GPS-Studio FASTのイメージ

図: GPS-Studio FASTのイメージ


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