地震動マップ推定システム QUIET+

地震は広域に甚大な被害をもたらす災害であるため、地震発生直後に被害の全体像をできるだけ早く把握して被害が大きい地域を特定するなど、限られた人員・体制で速やかな復旧活動を行うためには情報集約と状況把握が必要不可欠です。
公開される震度情報だけでなく、その地点にどのような揺れが生じたのかを知ることで、建物に生じる被害やその地域の被害の分布を推定することが可能です。

構造計画研究所が開発・公開した地震動マップ推定システム QUIET+では、地震後に公開される地震記録を用いて日本全国250mメッシュの分解能で計測震度相当値、地表最大加速度、地表最大速度を推定し、WEBブラウザ上でその結果を確認することができます。

地震動マップ推定システム QUIET+とは

地震動マップ推定システムQUIET+ (クワイエットプラス:QUick Identification of Earthquake Threat PLUS)は、2023年3月末に提供が終了した国立研究開発法人産業技術総合研究所の地震動マップ即時推定システム(QuiQuake)※1の後継として2023年4月にサービスを開始しました。

QUIET+の推定手法の開発ならびに、扱う地盤の揺れやすさデータ(Vs30マップ)※2については、QuiQuakeの開発者・管理者である現・東京工業大学 松岡昌志教授にご協力をいただいております。
サービス開始以降、地震の脅威を速やかに察知し、効果的な災害対応行動につなげるための情報として、被災者の生活を支援する組織や企業の事業継続を支援する組織にご利用いただいております。

    ※1. 地震動マップ即時推定システム(QuiQuake)は、地盤のゆれやすさデータ(Vs30マップ)と、強震観測網の地震観測記録とを高速処理することにより、地震観測記録公開後速やかに広域かつ詳細な地震動マップを推定・図示するもので、自治体や企業の事業継続計画や効果的な地震災害対応のための基盤情報として、国立研究開発法人産業技術総合研究所から 2009年10月に公開・提供されました。

    ※2. Vs30とは、表層地盤(地表からおよそ30m程度の深さまで)の平均せん断波速度を指す専門用語です。軟弱地盤ほど値が小さくなり、地震の揺れに対する予測係数であることが知られています。QUIET+では、松岡教授らによる以下の最新研究成果を反映したVs30マップを利用しています。

    • 桑原光平,髙宮奎志朗,松岡昌志,翠川三郎:機械学習を用いた日本全国の地盤の平均S波速度分布の予測,日本地震工学会論文集,Vol.21, No.5, pp.119-139, 2021.11.

    • 松岡昌志,桑原光平,橋本光史:日本全国を対象にした新しいVs30マップを用いた地震動強さの推定精度について,地域安全学会梗概集,No.51, pp.149-152, 2022.10.

QUIET+は利用する地震観測記録の違いにより、速報のQuickMapと確定報のQuakeMapの2種類のマップを提供しています。

QUIET+ QuickMap

QuickMapは、気象庁が公開する気象庁防災情報XMLフォーマット形式電文の震度情報を取得し、地盤の揺れやすさデータと統合処理することで地震計が無い場所の震度も補間推定した250mメッシュの震度分布を提供するものです。QuickMapは利用するデータの性質から次にご紹介するQuakeMapに比べて即時性は高まりますが、推定結果は計測震度相当値のみとなります。

QUIET+ QuakeMap

QuakeMapは、気象庁が公開する気象庁防災情報XMLフォーマット形式電文をトリガーに、国立研究開発法人防災科学技術研究所が公開する地震観測記録(波形)を取得し、地盤のゆれやすさデータと統合処理することで地震観測記録が無い場所の地震動強さも補間推定した250mメッシュの計測震度相当値、地表最大加速度、地表最大速度の分布を提供するものです。
現在、一定規模以上の地震が発生した際の損害査定業務や点検業務※3などの場面でご活用いただいております。具体的には、ピンポイントの建物群の震度曝露状況から「〇〇のエリアで△△程度の被害が発生している可能性があるため、査定/点検リソースが□□程度必要」といった初動判断の背景情報としてご利用いただいております。

    ※3. (激甚)災害時は、損害査定業務あるいは点検業務のリソース不足が見込まれるため、外部の専門会社を含め応援を依頼する際、どの程度のボリュームを必要とするか、その試算に利用されています。また、高い技術を有する人材に頼っている継続的な維持・管理業務は今後、人口減少・労働力の高齢化に伴う人材不足や、老朽化の加速による対象範囲の拡大により、適材適所が確保できなくなることが課題とされていることから、災害時における点検対象のスクリーニングでの利用が期待されています。

事例:石川県能登地方を震源とする地震

石川県能登地方を震源とする地震についても、地震発生による地震動マップを即時推定しております(例えば2024年1月1日には63地震のQuickMapと10地震のQuakeMapの即時推定結果を公開しております)。

能登半島地震の推定例

能登半島地震の推定例


QUIET+のご利用について

QUIET+の推定結果はメールアドレスをご登録いただくことでどなたも無料で閲覧いただけます。

プロダクトサイトのトップ画面右上「アカウント登録」からメールアドレスを登録してください。
アカウント登録後はログインすることによって推定結果を確認・取得することができます。

  「QUIET+ / 地震動マップ推定システム」プロダクトサイト トップ画面

「QUIET+ / 地震動マップ推定システム」プロダクトサイト トップ画面


QUIET+のサービス内容

QUIET+ではブラウザアクセスによるWEBサービスのほか、APIサービスにも対応しています。APIサービス利用者は、WEBサイトへログインすることなく、利用者独自のWEBシステムから直接、API方式でQUIET+の推定結果を取得し、その情報を活用することができます。独自に作成したウェブページでQUIET+の推定結果を表示したり、推定された揺れの大きさや予想される被害状況をモバイル端末上で確認するアプリケーションなどへご活用いただけます。

WEBサービスとAPIサービスの違い

WEBサービスとAPIサービスの違い


① QUIET+ WEBサービス(ブラウザアクセス)

WEBブラウザで利用者側からアクセスしてデータを取得することができます。2023年3月末に提供が終了したQuiQuakeと同等のサービスです。

QUIET+ WEBサービス(ブラウザアクセス)

QUIET+ WEBサービス(ブラウザアクセス)


② QUIET+ APIサービス(APIアクセス)

リクエストコマンドで利用者側システムからアクセスしてデータを取得することができます。

QUIET+ APIサービス(APIアクセス)

QUIET+ APIサービス(APIアクセス)


用途に応じて各種APIを提供します。

地震動マップAPI

リクエストした日時に該当する地震の計測震度相当値、地表最大加速度、地表最大速度の分布図をGeoTIFF形式で取得します。地震の選択条件として、リクエストした日時に該当する地震のうち最大震度が最も大きい地震(複数ある場合は、日時が新しい地震)、リクエストした日時に該当する最新の地震、を選択するリクエストパラメータを用意しています。

ポイント情報API

リクエストした日時に該当する地震の、リクエストした位置における計測震度相当値、地表最大加速度、地表最大速度の値をJSON形式で取得します。地震の選択条件は「地震動マップAPI」に同じです。位置を複数指定した場合はJSON配列で取得します。位置は緯度経度、250mメッシュコードのいずれかを指定するリクエストパラメータを用意しています。

地震情報API

リクエストした年月に該当する地震の震央地名、マグニチュード、最大震度の値をJSON形式で取得します。複数存在する場合はJSON配列で取得します。


今後のロードマップ

今後APIサービスとして以下の機能をリリースする予定です。

加速度応答スペクトルの推定

推定指標に、地震動の絶対加速度応答スペクトル(減衰5%)を追加予定です。建物の周期特性に応じた被害推定を行うなどの場面でご活用いただけます。

液状化危険度マップの推定

QUIET+が推定する地震動強さを外力とし、松岡教授らによる以下の研究成果を反映した液状化危険度マップをラインアップに追加予定です。

  • 松岡昌志,若松加寿江,橋本光史:地形・地盤分類250mメッシュマップに基づく液状化危険度の推定手法,日本地震工学会論文集,Vol.11, No.2, pp.20-39, 2011.5.
  • 桑原光平,松岡昌志:機械学習を用いた日本全国の液状化危険度の推定,日本地震工学会論文集,Vol.21, No.2,pp.70-89, 2021.5.


構造計画研究所では、QUIET+ APIサービスの提供だけでなく、QUIET+ APIを用いたソフトウェアの開発も承っております。このような形でQUIET+を使えないか、自社情報をQUIET+に取り込めないかなどのご要望がありましたら、是非お問い合わせください。

QUIET+は株式会社構造計画研究所の登録商標(商標登録第6709401号)です

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