AI・画像認識技術を活用した業務自動化支援
近年、少子高齢化による人手不足が深刻化しており、技術伝承や生産性・品質の向上が喫緊の課題となっています。
こうした背景から、AI・画像認識技術を用いて、「人」に依存しがちな業務を自動化する取り組みが進んでいます。
ここでは、以下の内容についてご紹介します。
- 画像認識技術の特長
- 画像認識の手法
- 画像認識技術を用いた業務効率化の事例
画像認識技術の特長
点検や品質チェック、危険監視など、専門性の高い業務においてベテラン技術者による目視と判断は欠かせません。しかし、「人」の目視と判断には、以下のような弱点があります。
- 知識や経験、能力の差で認識や判定の精度がバラつく
- 疲労やうっかりから重要なものを見過ごす
- 大量の情報をさばき切れない
一方で、画像認識技術には
- 熟練技術者に限らず、だれでも同じレベルの判断を行える
- 常に一定の基準のもとで、ブレない判断結果が得られる
- 大量のデータを高速で処理することができる
といった特長があり、「人」の目視と判断の弱点を補うことができます。
画像認識の手法
画像認識の手法には「ルールベース」と「学習ベース」の2種類があります。
画像認識手法「ルールベース」
対象物の特徴や良悪基準などが明確に定義(ルール化)されていて、それらと合致するかどうかを判定するのがルールベースの手法です。
定義された範囲であれば認識率が高いことがルールベースの特徴です。スマホのカメラなどで認識できるQRコードの位置検出はこれに当たります。
画像認識手法「学習ベース」
ルール化しきれないものや曖昧性があるものの判定に用いられるのが学習ベースの手法です。
たとえば、画像や映像の中から「猫」をピックアップしたい場合に、種類も色も模様も多様な猫全般を、犬や豹とも区別出来るようにルール化するのは容易なことではありません。このような場合は、猫の画像を大量に学習させた認識モデルに判定させるほうが近道です。
ルールベースがよいのか、学習ベースがよいのか、課題や目的に応じて適切な画像認識手法を選定することが重要です。
画像認識技術を活用した業務自動化の事例
画像認識技術はさまざまな分野で活用されています。ここでは、画像認識技術をベースにして業務自動化を支援した事例をご紹介します。
事例① 鋼管送電鉄塔内部の点検
画像認識による腐食箇所の検出と、既存のルールに基づく劣化レベルの算出により、鋼管鉄塔の点検業務を省力化するシステムを開発した事例です。
目視点検の課題
鋼管鉄塔の点検は、部材(鋼管)の内部を撮影した映像を目視で確認することにより、腐食箇所を検出し、その度合いや面積から劣化レベルを判定していました。しかし、多くの部材からなる鋼管鉄塔の点検映像の数は膨大で、その映像の目視確認の負荷や所要時間が課題でした。
画像認識技術による解決策
目視確認で行っていた、腐食箇所の検出と、劣化レベルの判定を自動化するシステムを開発しました。
人による判断をシステムに置き換える場合、従来のデータやこれまで蓄積してきた経験則との整合性が問題になることがあります。本事例では、「ルールベース」と「学習ベース」の手法を組み合わせることで、従来のデータや経験則との整合のとれたシステムを実現しました。腐食箇所の検出を「学習ベース」の機械学習手法で、劣化レベル算出を既存のルールに照らし合わせた「ルールベース」の計算方法で実現しました。そのほか、レポートの自動作成機能も実装し業務の効率化を図りました。
事例② アスファルト舗装のひび割れ検出と内部損傷状態の推測
画像認識によるひび割れ検出と、路面画像からひび割れの深さを推定する手法を開発した事例です。
路面性状調査における課題
路面性状調査の主要な評価指標の1つにひび割れ率があります。ひび割れ率の算出のためにはひび割れ面積が必要であり、これを目視確認で実施すると多大な手間がかかります。また、ひび割れの深さは補修方法の選定に関わるため、道路保全において重要な事項です。しかし、ひび割れの深さは切削やコア抜きといった破壊検査でしか知ることが出来ず、そのコスト・労力や交通規制が必要であることなどが課題でした。
画像認識技術による解決策
画像認識により路面画像からひび割れを認識し、ひび割れ率を算出する機能を実現しました。また、路面の撮影画像からひび割れ深さ(内部損傷状態)を推定する手法を開発しました。
内部損傷状態の推定は、「学習ベース」の手法により行いました。路面撮影画像と、切削やコア抜きによる検査結果の組を教師データとし、機械学習により推定モデルを構築しました。データ蓄積と学習を継続しているところですが、70%以上の推定精度を実現しています。
事例③ ドライブレコーダーからの情報収集
さまざまな対象の認識を組み合わせ、目的とするシーンを認識した事例です。ドライブレコーダーの普及に伴い、ドライブレコーダーの映像を活用することも増えてきています。
情報収集における課題
ドライブレコーダー映像の確認を目視で行っていては、作業のスピードや負荷の問題が生じてしまいます。データの収集が容易になった分、データ蓄積のスピードが向上しているため、この問題は顕著に現れます。
物体認識技術と画像処理技術による解決策
深層学習の進展により、映像から物体を認識することが可能になっています。この技術を活用することにより、映像の目視確認の省力化が図れます。しかし多くの場合、単に対象物を見つけるのではなく、工事現場や交通違反など、特定のシーンの検出や環境の評価など目視確認により判断したい内容は複雑です。
そこで、物体認識技術と画像処理技術の組み合わせにより、複数種類の対象の認識結果の分布等から目的のシーンを認識するシステムを開発しました。
以下はドライブレコーダー映像からの情報収集の例です。
- 路面の簡易点検(ひび割れ、白線等の検出)
- 無届の道路工事の発見
- 自動車の走行環境評価
- 運転手の交通規則遵守状態の把握
事例④ 機器のトレーサビリティ向上
汎用のOCR(文字認識)ツールでは対応が困難な対象に対応した事例です。
機器のトレーサビリティを目的としてシリアル番号を記録する際に、手入力では読取・記載ミスが多発するという問題がありました。
OCRツールでの課題
最初にOCRツールの導入を検討したのですが、認識したいシリアル番号は刻印文字で、以下の特徴が既存のOCRツールでの認識を困難にしていました。
- 表面が反射しやすい
- 刻印の深さが異なる
- 表面の塗料が異なる
- ビニール袋に入ったまま認識したい機器もある
画像認識技術による解決策
深層学習技術を用い、高速・高精度の刻印文字専用OCRを開発しました。また、スマートフォンを活用したシステムとして実装し、業務効率化にも寄与しました。
事例⑤ 図面からの部材自動認識
画像認識技術を用いた図面認識の事例です。
さまざまな理由によりCADデータが入手できず、紙やPDFの図面から部材を拾い上げたり、CAD図面を起こすことがあります。
そこで、深層学習や画像処理を組み合わせ、図面認識技術を開発しました。認識対象は、建築図面の場合、柱や建具(窓や扉、階段など)、壁や部屋(間取り)と目的に応じ拡充しています。この技術は、見積作成やCADデータの作成支援等に活用いただいています。
事例⑥ 防災への取り組み 画像によるさまざまな災害状況把握の技術検討
画像認識技術を用いた災害時の被害状況把握支援の取り組みの事例です。
被災時には、人命救助と共に迅速な被害状況の把握が求められます。また被害の情報収集の自動化・省力化は、救助活動等の人員確保の面でも有効です。
そこで深層学習や画像処理を組み合わせ、被害状況の収集や推定を行う技術の開発に取り組みました。
屋外については、ドローン活用を想定し、収集された上空からの撮影画像から土砂災害等の被害が発生した領域の抽出技術の開発に取り組みました。また屋内については、監視カメラ等の活用を想定し、それらの映像から家具の転倒やものの落下・散乱等を認識し、被害の程度を推定する技術の開発に取り組みました。
AI・画像認識技術を用いた業務自動化支援コンサルティング・サービス
構造計画研究所では、建築やインフラ維持管理分野のお客様へ、AI・データ分析を核としたコンサルティング・サービスを提供しています。
データサイエンスの専門家と、建設分野のエンジニアを合わせたコンサルタントのチーム体制で幅広いご提案が可能です。
ここでご紹介した画像認識のほか、数値データ解析やテキスト解析など、お客様の課題に最適な解析モデルの構築と業務適用に向けた支援をおこないます。
「画像認識技術を活用した業務自動化」事例集 無料ダウンロード
画像認識技術の活用事例集です。AI技術の発展により高度化した画像認識技術の適用事例をご紹介しています。
画像認識技術の適用事例
図面認識
- 部材の自動認識による見積・CADデータ作成業務の効率化
非破壊検査支援
- 伝達や習得が難しい熟練者の定性的判断の自動化
点検・修理履歴管理
- 3次元点群データとの連携による施設保全
災害時の状況把握
- 被害の情報収集の自動化・省力化
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