断層連動破壊の動力学的解析

過去の地震の痕跡である活断層では、今後も地震が発生する可能性が高いと考えられています。これを受け、航空写真の判読、地表踏査やボーリング調査等により、日本中で活断層の調査が行われています。しかし調査の結果明らかになった活断層には、一見ひと続きの断層に見えても、良く見ると途切れていたり食い違いがあるものがたくさん存在します。このような途切れや食い違いの位置で断層が分かれていると考え、大きな活断層を小断層の集まった断層帯とする時、一度の地震活動でどの範囲の小断層が破壊するかという問題は、地震の規模を考える上で非常に重要です。弊社では動力学的破壊シミュレーションを用いて、複数の小断層が連動して破壊するのか、それとも小断層単独でしか破壊しないのか、検討を行います。

動力学的破壊シミュレーションの概要

対象地域の応力場調査

断層連動破壊の評価には、対象とする断層帯周辺の応力場が重要となります。そこで、弊社では動力学的解析を行う前段階として、文献調査により断層周辺地域における応力場を調査した上で動力学的シミュレーションを行います。

すべり弱化モデルを用いた自発的破壊過程の再現

三次元の弾性体モデルの内部に断層がある場合を考えます。断層の破壊は、破壊を引き起こそうとする力である剪断応力と、それに抵抗する断層面上の摩擦力に支配されます。このうち、剪断応力は断層帯周辺の応力場により決定されます。一方、断層破壊によって変化する摩擦力は、すべり弱化モデルを用いて表現できます。 断層面上の一部が破壊すると、周囲の弾性体中で応力変化が生じます。弾性体中の応力変化は、弾性波動方程式を用いて計算することができます。すると破壊領域の端に応力が集中して、そこでも破壊が始まります。このように断層破壊が進展する様子を、有限差分法を用いてシミュレーションします。 断層連動破壊を検討する場合には、3次元モデル中に2枚以上の断層をモデル化し、ある位置から破壊が開始した場合に、2枚目以降の断層に破壊が移るか否かを評価します。