設計用入力地震動の作成|地震動評価コンサルティング
1995年兵庫県南部地震や2016年熊本地震をはじめとした活断層型の地震では、多くの構造物が被害に見舞われました。日本周辺には約2000もの活断層があると言われており、活断層を考慮した構造物の耐震検討が重要となっています。
さらに、2011年東日本大震災では、津波による甚大な被害が発生したほか、首都圏の高層ビルなどでは、長周期地震動による被害が多発しました。今後、高い確率で発生することが予測されている南海トラフ地震や、関東大震災の震源となった相模トラフ沿いなどの海溝型の地震でも、長周期地震動による被害が想定されており、対策が急がれています。
こうした状況を踏まえ、建築・土木構造物やプラント施設などでは、活断層型地震や長周期地震動に対して、安全性を確保できるような耐震設計の基準・指針が規定されています。
例えば、建築基準法では、大臣認定の取得が必要な免震構造物や60m以上の超高層ビルの設計には、地震波を用いた時刻歴応答解析による詳細な耐震検討が義務付けられています。検討に用いる地震波(設計用入力地震動)は、それぞれの基準に準拠し、適切に評価することが求められます。

設計用入力地震動の評価イメージ
構造計画研究所では、構造物の設計用入力地震動の作成について、20年以上にわたり多くの経験と実績を蓄積してまいりました。
一般建築のほか、風車や鉄塔などの超高層工作物、ダムや橋梁などの土木構造物、港湾やプラント施設などを対象に、過去15年で400件以上の実績があります。
豊富なノウハウをもとにお客様の目的に合わせた地震動の作成から適用のサポートまでをトータルで提供しています。
具体的には、地震動作成における適切な条件や手法の設定から作成根拠(ストーリー)の立案までを行った上で、計画段階から評定などの審査への対応、施主や専門家への説明までをトータルでサポートします。
以下では、建物や工作物の設計での利用を目的とした地震動評価である「設計用入力地震動作成」の具体的な提供内容をご紹介いたします。
「設計用入力地震動作成サービス」の概要
設計用入力地震動作成サービスは、各種構造物の耐震設計で必要となる地震動を作成するサービスです。単に地震動を作成するだけではなく、設計の計画段階から評定などの審査への対応、施主や専門家への説明までをトータルでサポートします。
具体的には
- 施主へ想定地震を選定した根拠(ストーリー)の説明
- 構造形式などの事前検討に使う地震動の先行提供
- 地震動作成に必要な地盤調査項目の提案
など、ご要望に応じて柔軟な対応を行っています。
また、地震動作成後には
- 評定委員会への同席・質疑対応
- 工学的判断による作成条件の再検討
- 設計変更に伴う地震動の再計算(床付けレベル変更など)
なども行っています。
設計フローにおける設計用入力地震動作成サービスの概要を以下に示します。

設計フローと設計用入力地震動作成サービス
設計用入力地震動の作成には、十分な知識と経験が必要です。
以下で、一般的な設計用入力地震動の作成方法をご紹介します。
設計用入力地震動の作成方法
一般的な設計用入力地震動の作成は、以下の手順で行います。
① 地震環境の調査
建設地点周辺の地震環境を調査し、敷地に与える影響が大きい地震を選定します。
② 工学的基盤における地震波の作成
建設地点直下の工学的基盤における地震波を作成します。
③ 浅部地盤の地震応答解析
浅部地盤の地震応答解析により、地表面での地震波を作成します。
設計用入力地震動作成フローを以下に示します。

設計用入力地震動作成フローのイメージ

設計用入力地震動作成フロー
設計用入力地震動の作成方法について各項目ごとにご紹介します。
① 地震環境の調査
地震環境の調査・想定地震の選定
建設地点周辺の活断層の活動履歴や過去に起きた被害地震、国や自治体による被害想定を調査し、建設地点で最も影響が大きいと考えられる想定地震(サイト波を作成する候補地震)を選定します。

地震環境の調査例
② 工学的基盤における地震波の作成
想定地震の震源断層モデルや建設地点における地下構造モデルを設定し、工学的基盤における地震波を作成します。
断層パラメータや深部地盤モデルの設定
想定地震の大きさや断層面の向き・傾き、断層面上でのずれの量、断層破壊の進行速度などの断層パラメータを設定します。基本的には公開情報を基に設定しますが、一部パラメータは実務担当者の判断に依る場合もあります。

断層パラメータの設定例
設定したパラメータに基づく地震動の評価
地震動を作成する方法には様々な手法があります。評価対象の構造物や地盤の周期特性も考慮し、適切な地震動作成手法を用います。
主な地震動評価手法
経験的手法 | :翠川・小林手法、距離減衰式 |
半経験的手法 | :統計的グリーン関数法、経験的グリーン関数法 |
理論的手法 | :波数積分法、3次元差分法 |
ハイブリッド合成法 | :半経験的手法+理論的手法 |

ハイブリッド合成法の概念
③ 浅部地盤の地震応答解析
地盤調査結果をもとに浅部地盤の地震応答解析を行い、対象構造物の設計用入力地震動を作成します。
地盤物性の非線形性や液状化の影響を適切に考慮できる解析手法・解析モデルを用います。
浅部地盤の地震応答解析手法・非線形性のモデル化方法の例
等価線形解析 | :SHAKE、FDEL、DYNEQ |
時刻歴非線形解析 | :修正ROモデル、HD(双曲線)モデル、石原・吉田の方法 |
液状化を考慮した解析 | :有効応力解析、簡易手法(低減率βを考慮) |

浅部地盤の地震応答解析例
設計用入力地震動を作成する際には、対象構造物の基準・指針に準拠し、検討目的に合った適切な地震動評価手法を選定する必要があります。
設計用入力地震動作成サービスの対象構造物の例
設計用入力地震動作成サービスの対象となる構造物の例をご紹介します。
建築(免震・制震)・超高層工作物
大臣認定の取得が必要な免震建物、60m以上の建築物、煙突・風車などの工作物の設計に用いる地震波(サイト波、告示波、長周期地震動)を作成します。
評定委員会への説明・質疑対応や、地震波ご提供後の設計変更等による修正にも柔軟に対応します。

大臣認定の取得が必要な建築物、工作物の例
建築(免震・制震)・超高層工作物の設計に用いる地震波の例
- 告示波 :建築基準法告示1461号
- サイト波 :活断層型地震、海溝型地震
- 長周期地震動 :国土交通省による基整促波※
※「 国土交通省:「超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策について」(平成28年6月24日)」において、設計用長周期地震動の作成方法として、基整促波の作成方法が規定されています。
土木構造物・プラント施設
ダムや橋梁などの土木構造物や港湾施設、プラント施設の耐震照査に用いる入力地震動を作成します。それぞれの構造物、施設の基準・指針に準拠した地震動の作成、検討目的に沿った地震動評価を行います。
土木構造物・プラント施設の基準・指針の例
- 大規模地震に対するダム耐震性能照査指針(案)・同解説
- 道路橋示方書・同解説
- 港湾の施設の技術上の基準・同解説
- 高圧ガス設備等の設計に関する基準

土木構造物・プラント施設の例
「設計用入力地震動の作成」事例資料 無料ダウンロード
想定地震による地震動(サイト波)を作成した事例資料です。
地震環境の調査から想定地震の選定、震源断層モデルや深部地盤モデルの設定方法、液状化を考慮した表層地盤の解析方法まで、詳しく解説しています。
下記のフォームよりお申し込みください。
設計用入力地震動作成で使用するプログラムのご紹介
従来、設計用入力地震動の作成には専門知識と膨大な時間を要していましたが、設計用入力地震動作成プログラムを用いることで、より簡単でスムーズに入力地震動を作成することができます。
以下で、設計用入力地震動作成プログラムについてご紹介します。
設計用入力地震動作成プログラムは、以下の5つのソフトウェアで構成されています。建築構造物のほか、ダムや橋梁、港湾などの土木構造物、プラント施設の設計基準・指針に対応しています。

設計用入力地震動作成プログラム
※ ARTEQ-LPは、国土交通省の対策における「別紙3の手法で直接建設地点の地震動を作成」(基整促波の手法)に対応しており、建設地点の緯度経度より長周期地震動の作成が可能です。
※ 国土交通省:「超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策について」(平成28年6月24日)
設計用入力地震動作成プログラム(自社開発)
- 地震荷重設定システムSeleS
- 模擬地震波作成プログラム ARTEQ
- 成層地盤地震応答解析プログラム k-SHAKE+
- 地震波形処理プログラム k-WAVE
- 長周期地震動作成プログラム ARTEQ-LP
構造計画研究所では、設計用入力地震動の作成に自社開発プログラムを使用しており、複雑な解析条件の場合にも柔軟に対応しております。