河川防災解析|河川の流況・氾濫・河床変動評価

近年大型化、頻発化している台風により、河川氾濫や土石流等による被害が相次いで発生しており、事前の対策が急務となっています。対策検討のための被害想定や実被害の事後検証には水や土砂の挙動に関する数値解析が重要な役割を果たします。

構造計画研究所では、長年独自に培ってきた流体解析に関する知見を基に、河川の氾濫や流況などの挙動の解析を行うコンサルティングサービスを提供しています。解析では、iRICソフトウェアやその他さまざまなソルバーを使用し、お客様の課題に合わせて対応しております。また、高度な技術課題など含め、京都大学防災研究所・流域災害研究センターの竹林 洋史准教授に技術監修をしていただきながら、下記の様な問題に活用しています。

河川防災解析・提供サービス概要

河川の氾濫解析

想定する降雨から算出した流量を指定し、土地の形状や土地利用を考慮した河川の氾濫状況を時系列に計算します。堤防のモデル化や破堤点などの設定を行った解析も可能です。

【コンサルティングメニュー】

  • 局所的な地域を対象とした詳細な浸水範囲や浸水深の想定図の作成
  • 様々なケースの降水を想定した氾濫解析(既往最大や想定最大など)
  • 堤防などの氾濫対策に対する効果検証

河川の流況評価

河川流路内の橋脚などの土木構造物周辺において、水の流れの解析を行います。河の流れ場に、構造物を障害物としてモデル化し、周辺の流路の変化を解析します。

【コンサルティングメニュー】

  • 橋脚などの土木構造物の建設による河川流路に対する影響評価

河床変動評価

河床地形や河床材料をモデル化し、想定する流量を指定することで、豪雨出水時の浸食深・堆積厚といった河床変動量を計算します。固定床・移動床の設定だけでなく、土木構造物を障害物としてモデル化し、周辺の河床変化を計算することも可能です。

【コンサルティングメニュー】

  • 豪雨出水時における橋脚など土木構造物に対する短期間の河床変動解析
  • 通常時流量を想定した年スケールの長期間の河床変動解析
  • 河道掘削事業や水制などの治水事業による効果検証

土石流解析

豪雨による斜面崩壊を起因とした2次元の土石流の解析を行います。浸食深の設定や、砂防ダム・建物などを考慮した解析が可能です。

【コンサルティングメニュー】

  • 局所的な地域を対象とした土石流影響範囲や浸水深の想定
  • 家屋などの構造物の考慮や、様々なポイントを起点とした土石流解析
  • 砂防ダムの効果検証

河床変動解析 事例

令和3年7月の豪雨時に発生した、黄瀬川大橋(静岡県沼津市)の橋脚の沈下現象を再現した解析事例です。
実際の豪雨出水では、蛇行する河川流路の外側(右岸側)に位置する橋脚周辺で流速が大きくなり、河床低下が引き起こされて橋が折れてしまいました。その現象を再現します。

黄瀬川大橋の周辺をモデル化し、iRIC(ソルバー:Nays2DH)を用いた河床変動計算を行いました。

黄瀬川大橋の橋脚沈下現象のモデル化

モデル化においては、竹林先生から詳細な河床変動解析の検討を行うにあたって必要となる河床地形や粒度分布などのデータをご提供頂き使用しています。河川内地形は高解像度1mDEM、河川外地形は5mDEMを用いました。河床材料は、黄瀬川大橋周辺で採取された混合砂の粒度分布を粒径加積曲線として設定しています。橋脚は、計算格子のセルを障害物と設定することで、疑似的に設定しています。境界条件は、黄瀬川大橋の上流側に存在する水位観測所の水位からH-Q式で推定した流量を使用しています。

黄瀬川解析対象領域(左:GoogleMap、右:国土地理院)

黄瀬川解析対象領域(左:GoogleMap、右:国土地理院)

黄瀬川のモデル化(右上図の赤い計算格子が橋脚の疑似モデル)

黄瀬川のモデル化(右上図の赤い計算格子が橋脚の疑似モデル)

黄瀬川大橋の橋脚沈下現象 再現解析による河床の浸食・堆積の結果

iRIC(Nays2DH)を用いた河床変動解析の可視化結果(左:水深、右:河床変動量)です。

全体として、湾曲する河川の外側では流速が早くなり河床が浸食、内側では流速が相対的に小さくなり堆積が起こる結果が再現されました。

iRIC(Nays2DH)を用いた河床変動解析の結果(左:水深、右:河床変動量)

iRIC(Nays2DH)を用いた河床変動解析の結果(左:水深、右:河床変動量)

今回の解析の目的である黄瀬川大橋の橋脚に注目すると、上流側で河道が湾曲していることにより、外側(傾いた橋脚側)の流速が速くなり、橋脚の右岸側の河床が洗掘される様子が確認できました。また、橋脚の右岸側では流速が速いために、より大きな粒径の河床材料も流され、左岸側に比べて粗粒化が起こっていることがわかります。
今回の黄瀬川大橋の再現解析の河床の浸食・堆積の結果は、概ね実現象の傾向をとらえた結果を得ることができています。

黄瀬川大橋橋脚付近の結果(左:河床変動量、右:平均粒径)

黄瀬川大橋橋脚付近の結果(左:河床変動量、右:平均粒径)

河川氾濫解析 事例

令和2年7月の豪雨時に発生した、球磨川(熊本県)の氾濫を再現した解析事例です。

球磨川氾濫の解析用 流量データ

iRICでは基本的に流域の一部分を切り取った局所的な範囲での解析を行います。インプットデータとしては、モデル化範囲における本流・支流の上流端位置の流量データが必要となります。
本解析では、モデル化範囲の近くに水位・流量観測所が存在しないため、球磨川全流域におけるRRIモデルを用いた流出解析結果から得られた流量データを使用して氾濫解析を行いました。

    ※ RRIモデル:流域に降った雨が河川に集まる現象、洪水が河川を流下する現象、河川を流れる水が氾濫原に溢れる現象を流域一体で予測できる降雨流出氾濫モデルで、土木研究所 ICHARMにより開発され無償提供されています。

球磨川全流域におけるRRIモデル用いた流出・氾濫解析

球磨川全流域におけるRRIモデルを用いた流出・氾濫解析

水位計が設置されていない等の理由で当該位置での流量が不明であっても、本事例のようにiRICにおけるインプット流量として、降雨データに基づいたRRIモデルの解析流量データを用いることにより、氾濫解析が可能となります。

iRICによる氾濫解析

被害が甚大だった地域周辺をモデル化し、iRIC(ソルバー:Nays2DFlood)による氾濫解析を行った結果です。

国土地理院の浸水推定図では、河川が蛇行している場所や、低地の田園地帯で大きな浸水被害が発生している様子が示されています。今回のiRICの氾濫解析結果は、国土地理院の浸水推定図に近い浸水範囲および浸水深分布を得ることができており、再現性の高い結果であると言えます。

浸水推定図(国土地理院)とiRICによる氾濫解析結果の比較

浸水推定図(国土地理院)とiRICによる氾濫解析結果の比較

氾濫解析 応用例

本事例は過去の雨量データを用いた再現解析です。
被害想定を行うための予測解析についても想定最大雨量データなどを用いることにより解析可能です。

河川防災解析 使用ソフトウェア

本解析事例は以下のソフトウェアを用いて行ったものです。

iRICソフトウェア

iRICソフトウェアは、水工学に係る数値解析のプラットフォームです。iRICは、International River Interface Cooperativeの略称であり、河川をはじめ水や土砂など水工学に係る数値シミュレーションのプラットフォーム(iRICソフトウェア)の開発やそれに係る情報発信、講習会開催などを行っている団体です。

iRICソフトウェアは、iRIC 研究会に入会することで、無償で活用することが出来ます。多様なソルバーが用意されており、それぞれのソルバーの機能拡張が研究者によって継続され、日々更新されています。ユーザーは取り扱う問題によって最適な計算方法を選んで解析を行うことができます。

また、DEM(地形データ)インポートやオートメッシュ作成等のプリポスト機能が充実しており、アニメーションなど解析結果の可視化機能も備えています。
従来の河川流況解析プログラムに比べ、よりスピーディに解析を実行することが可能です。

  iRICソフトウェア

RRI on iRIC

  • RRI on iRICの原著作物(以降、RRI)の著作権は、土木研究所(ICHARM)にあります。
  • RRI on iRICは、RRIの二次著作物にあたります。
  • 計算結果は、RRIを改変したプログラム( RRI on iRIC )によるものです。

河川防災解析 資料 ダウンロード

流況・河床変動解析コンサルティングサービス(PDFファイル)


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