土砂災害の影響検討

集中豪雨や地震の作用によって傾斜地が不安定化し、崩壊土砂の流出を伴う土砂災害や、火山の噴火に伴う溶岩流による火山災害によって生じる被害が問題となっています。土石流や溶岩流の被害範囲の推定や影響評価は、避難体制の策定や予防・対策工の設置、既存構造物の評価において重要であり、対象サイト毎の影響評価シミュレーションが必要とされています。

構造計画研究所では、豊富な流体解析の知見をもとに流体・混相体の流動シミュレーションによるコンサルティングサービスを提供します。

評価対象例

  • 土石流の固液混相流解析シミュレーション
  • 地形を考慮した土石流の解析シミュレーション
  • 火山の噴火に伴う溶岩流解析シミュレーション

評価事例

土石流の固液混相流解析シミュレーション

解析事例

土砂災害の発生時には降雨や地震の作用によって地下水位が上昇しており、土石流等の流動現象は固相と液相の混相流となっています(更に気相の作用も生じています)。このような混相流の挙動は複雑であり、相ごとに分けてモデル化を行った土石流の解析事例を紹介します。


モデル化の方法

下図に今回検討の対象とした問題を示します。

流路は流下方向に対して25/100の勾配を有し、その途中に堤体を設けています。また、流路の断面は台形で、1:1の傾斜を有するものとしています。

土石流は土砂(固相)と水(液相)の混合体と捉え、固相をDEMによる粒状体として、液相を粒子法によるMPS要素としてモデル化し、DEMとMPSの連成問題として計算を実行します。


モデル鳥瞰図

モデル鳥瞰図

モデル上面・側面図

モデル上面・側面図

流路断面図

流路断面図

解析結果

解析結果動画を以下に示します。シミュレーションでは堤体に衝突した流体が飛沫を生じ、また、捕捉しきれなった礫群が堤体を乗り越えていく過程が表現されています。


解析モデル全体
(レイトレーシング法によるレンダリング)

堤体付近より土石流を観察
(レイトレーシング法によるレンダリング)


巨礫を含む土石流と砂防ダム

固液混相流の中央断面での圧力分布


地形を考慮した土石流の解析シミュレーション

解析事例

土石流の流下においては、地形や地表面の状態を適切に反映することが重要です。ここでは、流路の途中に樹木がある場合を想定し、樹木の有無により土石流の流れがどのように変わるかを評価した事例を紹介します。


モデル化の方法

今回対象とする現象は比較的広い範囲を対象とするため、土石流を均質な粒子でモデル化し粒子法による解析を実施します。

土石流が地形に沿って流下するよう地表面には粗度を設定し、流路の途中には流路を跨ぐ橋を設置しています。

また、樹木を流路上に設置し、樹木の有無による影響を確認します。


解析結果

解析結果動画を以下に示します。シミュレーションでは土石流が地形に追随した流れとなっており、イメージと合致しています。また、樹木が存在するケースにおいては、樹木をなぎ倒しつつ流れること、並びに途中の端でせき止められた樹木により流路が閉塞している様子が確認できます。


粒子法による地形を考慮した土石流の解析シミュレーション


火山の噴火に伴う溶岩流解析シミュレーション

解析事例

火山国である日本においては、火山噴火時の避難経路設定が重要であり、そのためには噴火時に溶岩がどのように流れるかを精緻に把握することが必要となります。

ここでは、1986年に伊豆大島で発生した三原山の溶岩流の再現解析事例を紹介します。


モデル化の方法

1986年の三原山の噴火は割れ目噴火という噴火形態であり、複数の火口から溶岩が流れ出していました。

解析ではそのうちの一つの火口からの噴火を想定し、火口位置から流体粒子を押し出すことで溶岩流を再現するモデル化としています。なお、溶岩流は粒子としてモデル化し、粒子法による解析を行っています。


解析結果

解析結果動画を以下に示します。シミュレーションでは溶岩が三原山北側の斜面の谷筋に沿って、扇状に広がりながら流れていく様子が確認できます。


粒子法による溶岩流解析シミュレーション

シミュレーションのポイント

流動体の形態に応じたモデル化

対象を剛体として取り扱い、剛体間の重なりを許容するソフトな接触モデルを導入することで、接触点毎に作用力伝達系の運動方程式を立て、多体接触問題を解き明かす離散体解析手法。個々の運動方程式は連立せずに陽的に解き進めることが一般的であり、粉のような多量の粒状体の解析や不連続面を有する岩盤等の解析に用いられています。

地形の条件設定

対象を粒子でモデル化し任意の影響半径内の粒子点で支配方程式を満たすように離散化を行う解析手法。影響半径内の物理量の分布としてカーネル関数を設定して積分を行います。ラグランジュ記述であり積分点数の多さから大変形や自由表面の表現に優れる一方で計算時間が長いのが特徴です。連続体解析手法であり固体から流体まで圧縮性・非圧縮性問わず適用されています。

地形や堤体との接触作用

土石流や溶岩流の流下シミュレーションでは、流動体が流れていく様子を再現することも目的の一つですが、流動体が衝突した際の被衝突物の挙動を評価することが設計や被害予測においては重要となります。

すなわち、運動エネルギーの大きな流動体と地形や堤体、構造物との接触をどのようにモデル化するかが腕の見せ所となります。また、被接触物の挙動が精度よく評価できるようなモデル化も必要となります。

キーワードの補足説明

個別要素法(DEM)

対象を剛体として取り扱い、剛体間の重なりを許容するソフトな接触モデルを導入することで、接触点毎に作用力伝達系の運動方程式を立て、多体接触問題を解き明かす離散体解析手法。個々の運動方程式は連立せずに陽的に解き進めることが一般的であり、粉のような多量の粒状体の解析や不連続面を有する岩盤等の解析に用いられています。

粒子法(SPH,MPS,…)

対象を粒子でモデル化し任意の影響半径内の粒子点で支配方程式を満たすように離散化を行う解析手法。影響半径内の物理量の分布としてカーネル関数を設定して積分を行います。ラグランジュ記述であり積分点数の多さから大変形や自由表面の表現に優れる一方で計算時間が長いのが特徴です。連続体解析手法であり固体から流体まで圧縮性・非圧縮性問わず適用されています。