液状化解析

近年発生した平成28年(2016年)熊本地震や平成30年(2018年)北海道胆振東部地震では、液状化による被害がありました。最近では、令和3年(2021年)、令和4年(2022年)の福島県沖地震の際、港湾施設に大きな被害が出たことも記憶に新しいと思います。
液状化が発生すると、地盤沈下により建物が傾いたり、地中構造物が浮き上がったりします。また液状化が発生する場合としない場合では、想定される建物の揺れ方は変わります。構造物の耐震設計では、FL値等を用いた簡便な液状化判定を行い、液状化可能性の有無を把握する事が基本となりますが、液状化した場合の地盤の挙動や作用する力などを評価する必要があります。

建築・土木の各分野で考え方が整理されており、主だったもので以下の基準・指針類があります。

  • 道路橋示方書・同解説 Ⅴ耐震設計編(日本道路協会、平成29年)
  • 鉄道構造物等設計標準・同解説 耐震設計(鉄道総合技術研究所、平成24年)
  • 港湾の施設の技術上の基準・同解説(日本港湾協会、平成30年)
  • 建築基礎構造設計指針(日本建築学会、令和元年)

一方で、様々な評価方法がある上、設計者の判断に委ねられる部分が多いのも事実です。
構造計画研究所ではこれまでの建築・土木分野の豊富な業務経験と、高度な解析技術を駆使して、液状化地盤の挙動評価や構造物の評価・設計支援を行っています。

液状化解析 コンサルティングサービス概要

構造計画研究所では有効応力解析を用いて、設計用入力地震動の作成や構造物(新設・既設のタンクやカルバートといった杭基礎構造物・地中構造物など)の耐震性能評価、液状化対策効果の比較検討解析などを実施しています。

    ※有効応力解析とは、土粒子骨格と間隙水との相互作用を考慮した解析です。これにより、地震時の間隙水圧の変動と有効応力の変動を直接的に求めることが可能となるため、過剰間隙水圧の上昇と有効応力の減少を考慮して地盤の変形量を評価することができます。また、構造物への入力として用いる地震動についても、過剰間隙水圧の上昇と有効応力の減少による影響を考慮した計算が可能となります。

なお、液状化の発生が懸念される場合に、液状化解析に必要な地盤情報データを取得するための地盤調査内容のアドバイスや、データが不足している場合のデータ補完(例:液状化強度特性)の支援なども行っています。

【コンサルティングメニュー】

  • 液状化を考慮した設計用入力地震動作成、建築評定対応
  • 応答変位法による杭基礎の評価・設計
  • 地盤-構造物連成モデルによる側方流動検討
  • 地盤改良、鋼管矢板設置などの対策案の検証

液状化解析 事例

液状化を考慮した設計用入力地震動の作成、建築評定対応

以下の地盤を考え、有効応力解析により液状化の発生を考慮した地表の地震動を計算した事例です。

計算に用いた地盤モデルの模式断面図

計算に用いた地盤モデルの模式断面図
※模式図です。実際は物性値毎に層の細分化を行います。

液状化を考慮した地表での加速度波形例を以下に示します。比較のために液状化層を液状化しない層として扱った結果(全応力解析)も併記しています。

有効応力解析と全応力解析の結果例(加速度波形)

有効応力解析と全応力解析の結果例(加速度波形)

どちらも揺れ始めは同程度の振幅を持っていますが、途中から有効応力解析の振幅が明らかに小さくなっています。さらに後の時間帯では、有効応力解析の短周期成分が欠落し、長周期成分が卓越した波形となっています。下図に示す応答スペクトルで見てもこの事がよくわかります。
この現象は急激な地盤の非線形化を示唆しており、まさに液状化の発生を表しているものです。

有効応力解析と全応力解析の擬似速度応答スペクトル

有効応力解析と全応力解析の擬似速度応答スペクトル

液状化の発生により、液状化層が天然の免震層的な役割を果たすことで、上記のように地表での地震動は短周期成分が欠落し卓越周期が長周期化することがあります。
一方で、液状化が発生すると、直接的な被害(地盤沈下や噴砂等)はもちろんですが、地盤の変位が大きく出ることで下部構造物に大きな被害をもたらします。さらに、卓越周期の長周期化により、免震構造物にはより厳しい揺れとなる恐れもあります。

液状化を考慮した場合としない場合の地盤応答の違い(イメージ図)

液状化を考慮した場合としない場合の地盤応答の違い(イメージ図)

このように、液状化の考慮の有無で地震動や地盤の応答は大きく様相が異なってくるため、液状化を考慮した解析が必要となります。
構造計画研究所では、どのように液状化の影響を評価し、構造物の設計に用いる地震動を作成したのかをストーリー立てて審査機関に説明する事も行っています。


液状化を考慮した設計用入力地震動を用いたフレーム解析

液状化を考慮した構造物の耐震解析手法となる、応答変位法解析の事例を紹介します。応答変位法とは構造物を地盤ばねにより支持されたフレーム構造や3次元FEMでモデル化し、上記の液状化を考慮した有効応力解析で算定した地震時の応答(変位、せん断力、加速度など)を作用させる手法です。

応答変位法解析モデル(イメージ図)

応答変位法解析モデル(イメージ図)

■評価・設計は以下の流れで行います。

  1. ① 解析条件のヒアリング、解析条件資料の作成
    • 地盤情報・構造物情報の整理
    • モデル化手法検討
  2. ② 液状化強度フィッティング
  3. ③ 地盤モデルの地震応答解析(1次元モデル、2次元モデル)
  4. ④ 地震応答解析結果の抽出
  5. ⑤ フレームモデルの作成、解析実施
  6. ⑥ 解析結果に基づく構造物の評価検討
  7. ⑦ 杭基礎の評価・設計

地盤―構造連成モデルによる側方流動の検討

護岸構造物を対象として、液状化が発生するかどうかの確認と、護岸の変形量について検討した事例です。
想定地震動を入力し解析的に検討を行った結果、過剰間隙水圧比としては1.0に近い値(有効応力はほぼゼロの状態)で、液状化が進行するとともに地盤変位も増大していくことが分かります。

過剰間隙水圧比コンタ図

過剰間隙水圧比コンタ図


過剰間隙水圧比の時刻歴

過剰間隙水圧比の時刻歴

変位の時刻歴

変位の時刻歴

地盤改良による効果検討

先程の事例は現在の地盤状態における液状化の評価ですが、現状の評価に加えて、その結果を踏まえた地盤改良案や対策工法案をもとに、解析による効果検討を行うことも可能です。効果検討事例を示します。

地盤の液状化解析結果(液状化対策前)

地盤の液状化解析結果(液状化対策前)

地盤の液状化解析結果(液状化対策後)

地盤の液状化解析結果(液状化対策後)

上図は液状化対策前と地盤改良による液状化対策後の過剰間隙水圧比発生状態を示しています。
地盤改良を含めた液状化対策による効果検討については、お客様と協議の上、モデル化手法を提案させていただいています。この事例では構造物周辺の過剰間隙水圧比の上昇が抑えられる傾向(液状化が発生しにくい傾向)となっており、液状化対策の効果を解析で確認することができています。
また、構造物への影響度合いについても指針やご希望となる評価基準と照らし合わせ、改良前後の比較検証を行っています。液状化の状態は想定する地震動によっても発生度合いが大きく異なることから、検討地点において想定される地震動を複数考慮した検討を行うことが多くなっています。

■コンサルティングは以下の流れで行います。

  1. ① 解析条件のヒアリング、解析条件資料の作成
    • 地盤の物性情報の整理
    • 評価構造物の物性情報の整理
    • モデル化手法の検討
  2. ② 液状化強度フィッティング
  3. ③ 地盤モデルの地震応答解析(2次元モデル)
  4. ④ 解析結果の整理
  5. ⑤ 液状化対策の検討、ヒアリング
  6. ⑥ 対策後の地震応答解析(2次元モデル)
  7. ⑦ 対策前後の応答比較、評価検討

液状化解析 使用ソフトウェア

液状化による構造物被害予測プログラム FLIP

FLIPは、旧運輸省港湾技術研究所で開発された液状化による構造物被害予測プログラムです。

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