構造物と地盤の動的相互作用を考慮した解析・コンサルティング

阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などを受け、構造物に求められる耐震性能は年々高まってきています。

その中でも

  • ボックスカルバート等の地中構造物
  • タンク等の内部に液体を含む構造物
  • ダムや護岸構造物

の地震時応答は、構造物と地盤それぞれが非線形挙動を示すとともに、相互に作用し合い複雑な挙動となるため、高度な解析技術が求められます。

構造計画研究所では,長年培ってきた構造物と地盤の動的相互作用を考慮した解析技術をもとに,より安全で現実に沿った耐震性能評価を実施しています。

構造物と地盤の動的相互作用を考慮した解析・耐震性能評価事例を以下でご紹介します。

原子力発電所の屋外重要土木構造物の耐震性能照査事例

構造物と地盤の動的相互作用を考慮した解析事例として、RC地中ボックスカルバートの解析事例をご紹介します。

事例では、高度な耐震性能が要求される「原子力発電所屋外重要土木構造物の耐震性能照査指針・マニュアル(以下、マニュアルと表記)」2018年10月改定版※1に準拠し、3次元材料非線形解析および耐震性能照査を実施しました。

    ※1 :2018年10月に改定された「原子力発電所屋外重要土木構造物の耐震性能照査指針・マニュアル」(土木学会原子力土木委員会 地中構造物の耐震性能照査高度化小委員会) では、3次元材料非線形解析にも対応した耐震性能照査フローが新しく追加されました。

解析対象構造物

解析対象構造物はマニュアルの照査例を参考とした屈曲部を有する2連のRCボックスカルバートです。

ボックスカルバートの耐震性能評価は2次元解析で行われることが一般的ですが、屈曲部を有するような構造では3次元解析の方がより現実に即した評価ができます

解析対象イメージ図

図 1. 解析対象イメージ図

解析モデル

地盤とコンクリートを3次元ソリッド要素で、鉄筋はバイリニアの非線形特性を持つ平面応力要素でモデル化しました。平面応力要素による鉄筋のモデル化のイメージ図を図 3に示します。節点数は100万節点程度と、一般的な2次元解析のモデルと比べると3次元解析ではモデル規模がかなり大きくなります。

解析エンジンは、オープンソースの構造解析プログラム FrontISTR※2をカスタマイズしたものを用いました。

解析モデル図

図 2. 解析モデル図

平面応力要素による鉄筋のモデル化

図 3. 平面応力要素による鉄筋のモデル化


    ※2 :FrontISTR は、文部科学省 次世代IT基盤構築のための研究開発「イノベーション基盤シミュレーションソフトウェアの研究開発」プロジェクトによる成果をシーズとして,FrontISTR研究会で継続的に開発されている並列有限要素解析プログラムです。


非線形構成則

コンクリートのひび割れや圧縮破壊、圧縮破壊によるせん断剛性の低減などを考慮した非線形構成則を用いました。コンクリートの非線形性を適切に考慮することで、コンクリートのひび割れ、鉄筋の降伏後の挙動も評価することができます。

解析に用いるRC材料モデル

解析に用いるRC材料モデル


鉄筋の構成則(平面応力要素)

鉄筋の構成則(平面応力要素)


コンクリートの構成則(ソリッド要素)

コンクリートの構成則(ソリッド要素)


参考として、1要素で繰り返し載荷を行った場合の応力ひずみ関係を図化したものを示します。このように載荷レベルに応じて複雑な挙動を示します。

コンクリートの履歴曲線

コンクリートの履歴曲線


3次元静的非線形解析による照査結果

今回の検討では底面を固定したうえで、水平方向に慣性力を作用させることで検討を実施しました。

以下に3次元静的非線形解析による照査結果を示します。

全体変形図(変形倍率:500)

全体変形図(変形倍率:500)


ボックスカルバートの直線部、屈曲部の圧縮主ひずみと、ひび割れ状況を以下に示します。

ボックスカルバートの屈曲部には、直線部に比べて大きめのひずみとそれに起因するひび割れが発生していることが確認できました。特に屈曲部に近いカルバートの側壁部分で応答が卓越しています。

この結果からも、屈曲部を有するような構造物では3次元解析による検討が有益であることが分かります。

圧縮主ひずみ(左:カルバート真ん中、右:カルバート交差部近傍)

圧縮主ひずみ(左:カルバート真ん中、右:カルバート交差部近傍)

実際の照査では、解析から得られた最大圧縮主ひずみを用いて、マニュアルに示されている方法に従い、圧縮主ひずみによる材料の損傷を評価します。

また、コンクリートに発生するひび割れを目視により確認できます。

コンクリートのひび割れ状況(左:カルバート真ん中、右:カルバート交差部近傍)

コンクリートのひび割れ状況(左:カルバート真ん中、右:カルバート交差部近傍)



RC地中ボックスカルバートを対象として、地盤と構造物の動的相互作用を考慮した3次元静的非線形解析を実施した事例をご紹介しました。

屈曲部等を有する構造物で、より現実に沿った評価を行うためには、その3次元的な形状をモデル化する必要があることを示しました。

また、検討に用いた解析コードはスーパーコンピューターを用いることで、大規模な問題でも比較的短時間で結果を得ることができます。本事例での解析時間は1時間程度でした。ですので、本事例の解析モデル底面に地震動を入力した動的解析を実施することも可能です。

構造物と地盤の動的相互作用 対象構造物・解析評価例

構造物と地盤の動的相互作用を考慮した耐震性能評価の対象となる構造物と、その解析手法・評価例を示します。

杭などの地下構造物の検討例

  • 応答変位法等による杭の簡易検討
  • 3次元モデルによる群杭効果の検討

海洋構造物の検討例

  • 非線形動的解析、応答変位法、応答震度法による検討

タンク構造物の解析例

  • タンク―地盤―杭の連成動的解析
  • タンク―液体の連成動的解析

アーチダム、ロックフィルダム等の解析例

  • ダム―地盤の連成動的解析
  • ダム―水の連成動的解析

護岸構造物の解析・評価例

  • 構造物―地盤の連成動的解析(液状化考慮)
  • 確率論的手法を取り入れた信頼性評価
  • 不確定因子をパラメータとし、ばらつきを考慮した耐震安全性評価
  • モンテカルロシミュレーション法(MCS)
  • ラテンハイパーキューブサンプリング法(LHS)

液状化の解析例

  • 有効応力解析手法による過剰間隙水圧の上昇を考慮した動的解析
  • 累積損傷度理論に基づく簡易手法による液状化解析

オープンソース大規模並列FEM非線形構造解析プログラム FrontISTR

RC地中ボックスカルバートの解析事例は、オープンソース大規模並列FEM非線形構造解析プログラム FrontISTR を用いて行ったものです。

FrontISTR(フロントアイスター) は文部科学省 次世代IT基盤構築のための研究開発「イノベーション基盤シミュレーションソフトウェアの研究開発」における「大規模アセンブリ構造対応構造解析ソルバーの研究開発」プロジェクトによる成果をシーズとして,FrontISTR研究会で、継続的に開発されている並列有限要素解析プログラムです。WindowsやLinuxのPCクラスタはもとより京などの超並列スパコンにも対応可能です。地盤解析だけではなく、産業、土木、建築、生体など、幅広い分野で適用されています。

  FrontISTR研究会

関連する論文・学会発表

  • 動力学シミュレーションを用いた断層変位を受けるRC カルバートの挙動に関する解析的検討
    (令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会)
  • Dynamic Simulation of Nuclear Power Plants Subjected to Secondary Fault Displacement by Dynamic Rupture Simulation and Domain Reduction Method
    (26th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology)
  • 3次元FEMによるRCカルバートの屈曲部における耐震ジョイントの影響についての考察
    (令和3年度土木学会全国大会第76回年次学術講演会)

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