BIM・点群データを活用した維持保全業務の高度化

インフラ施設の老朽化や労働人口の減少を背景に、広域かつ大量に存在する建物や設備をいかに効率的に運用・維持管理するかが課題となっています。また、地球温暖化ガスや廃棄物削減といった環境問題の観点から、既存の建築ストックを長寿命化し有効活用していくことが求められています。

構造計画研究所では、デジタル技術を活用したインフラ施設・設備等の維持保全業務の効率化支援に取り組んでいます。

ここでは、BIMモデルや点群データを活用した維持保全業務の効率化事例として、中日本高速道路株式会社 様の「イノベーション交流会」における「BIM・点群データを活用したメンテナンス管理支援」の技術実証についてご紹介します。

事例|BIM・点群データを活用したメンテナンス管理支援

中日本高速道路株式会社 様においては、最先端のICT技術など次世代技術を活用した革新的な高速道路保全マネジメント「i-MOVEMENT」を推進しており、この早期実現を目指すため、コンソーシアム方式による「イノベーション交流会」が実施されています。

構造計画研究所は、この交流会の中で施工過程における現場情報や維持保全の業務サイクルのデジタル化による、生産性および品質の向上に資する実証の取り組みを行いました。

実証内容のポイントは以下の2点です。

1.建設工事中の出来形管理の高度化

  • 施工過程で定期的に点群、パノラマ写真撮影を実施し、図面や写真による施工管理との対比など、関係者間での情報共有の場面での効率化の効果を検証する

2.維持保全の業務サイクルにおけるBIM・点群の活用効果の検証

  • 設備機器の点検結果の記録など、維持管理データとBIMモデル、点群建屋データのデータ連携を行い、点検手法の検討や現況確認、しゅん功情報の確認など、維持管理業務の効率化を検証する

以下では、それぞれの実証内容と検証結果についてご紹介します。


1.建設工事中の出来形管理の高度化

NEXCO中日本管内で新たに建設中の建屋等の施工過程において、ウェアラブル計測機器「NavVis」を用いて定期的に3次元点群データ、パノラマ写真撮影を実施し、クラウド上に建屋の3次元空間を構築しました。

基礎工事現場における計測の様子

基礎工事現場における計測の様子


取得した3次元点群データ

取得した3次元点群データ


施工過程における3次元データ活用のメリットとして以下の点が挙げられます。

  • ストリートビュー形式で前後左右の自由な視点から現場を直感的に把握することができる
  • 構造物の諸元データ(台帳や設計図書)や検査記録、維持管理記録などをタグ付けすることで、より簡便に情報を共有できる
  • Webブラウザベースのため、現場状況を遠隔から確認できる

施工過程における3次元データ活用のメリット

施工過程における3次元データ活用のメリット


施工過程における3次元データ活用により、工事記録写真や竣工写真の代替としての利用可能性や、現場状況の共有による認識の齟齬の解消といった、出来形管理における適用範囲と効果を検証しました。
計測結果と実状の比較、関係者へのヒアリングにより、作業負荷の軽減や品質向上など施工管理の全体効率化につながることを実証しました。


2.維持保全の業務サイクルにおけるBIM・点群の活用効果の検証

BIMモデル、3次元点群データ、パノラマ画像、点検結果、維持管理データを一元化したプラットフォームの構築を見据え、維持管理上の運用イメージの具体化、シナリオ化を実施しました。
各種データを連携させることで、業務理解の促進やコミュニケーションギャップの解消、検索性の向上、現地確認の手間削減といった、維持管理業務の効率化を進める上で一定の効果が得られることを確認しました。

維持保全プラットフォームの画面イメージ

維持保全プラットフォームの画面イメージ


建設時の施工過程を3次元計測しておくことで、施工管理の効率化だけでなく、その後の維持保全においても、たとえば補修時に壁に大きな穴を開けなくても壁の裏にどういう設備がどういう配置であるかを把握することができ、作業の無駄を削減することができます。

竣工後と施工中のパノラマ画像

竣工後と施工中のパノラマ画像
天井裏や壁内の配管など、表に出ない箇所の設備配置を容易に確認可能


以下は、NEXCO中日本 御殿場 保全・サービスセンターでの実証例です。

NEXCO中日本 御殿場 保全・サービスセンターでの実証例
-NavVisを活用した建築建屋維持管理支援-


3次元デジタル化ソリューション|NavVis による空間計測

NavVis は点検現場等の対象空間の 360度パノラマ画像と点群データを、人が歩行しながら高速・高品質に3次元計測するウェアラブルツールです。
NavVisで作成したバーチャル空間はWeb上で簡単に閲覧可能なので、現場に赴いていない技術者も高い臨場感で正確に状況を把握することができ、点検品質の向上と維持管理業務の効率化を図ることができます。
点検のほかにも、災害や事故、建設工事現場の状況保存と共有、取得情報からの解析モデルやシミュレーション空間の作成など、さまざまな目的で利用されています。

NavVis による空間の計測と参照

NavVis による空間の計測と参照


NavVisで計測したプラント設備の3次元点群データ(イメージ)

NavVisで計測したプラント設備の3次元点群データ(イメージ)


NavVisの特長


①高速・高品質な現場3Dデータ作成

  • 現場の3Dデータを高速かつ高品質に作成し、現場での計測時間を大幅に短縮化します

②現場3Dデータの可視化

  • 現場をストリートビューライクという非常に視認性の高い形式で3D化します
  • いつでもどこからでも現場の情報にアクセスできるようにすることで、現場調査の手間と合意形成の時間を大幅に削減します

NavVis導入事例

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ニュースリリース

3次元デジタル化プラットフォーム NavVis

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