近接施工の影響解析
地下空間の利用や鉄道周辺の開発、道路・上下水道の整備等に伴い、既設構造物に近接した敷地における工事が増えています。特に都市部では交通・インフラ施設が密集しており、工事の際には近接する構造物への影響を評価し、施設管理者との協議や報告が必要となるケースが増えています。
施工時の近接構造物への影響イメージ
構造計画研究所では、こうした施工時の近接構造物への影響を解析的に評価し、周辺に配慮した工事計画立案のサポートを行っています。
近接施工影響評価の概要
近接施工影響評価とは
近接施工影響評価は、施工時に「近接程度」によって既設構造物への影響を評価する必要がある場合にFEM予測解析を行い、評価結果をもとに対策工法を検討することです。
近接程度とは
「近接程度」とは、対象構造物へ与える影響についての度合いを、無条件・要注意・制限等の範囲で区分したものです。
既設構造物の「近接程度」の範囲については、公的機関・企業体(道路、鉄道、インフラ、トンネル等)が基準・指針を整備しています。基準類がない企業や民間の場合は、類似する基準・指針を参考にして決める場合が多いです。
評価方法
開削工、基礎工、トンネル、盛土等の施工時に、工事中の地盤変形が近接する構造物に及ぼす影響を2次元または3次元FEMモデルによる静的線形解析により評価します。
評価対象や施工条件、解析コスト(期間・費用)などを考慮し、合理的な解析方針で実施することが重要です。
近接施工の影響評価 事例
近接施工の影響を評価した事例をいくつかご紹介します。
事例① 鉄道施設に近接した敷地における掘削工事
鉄道軌道がある盛土のすぐそばで埋設管撤去のための地盤掘削を行う際の既設構造物の変位(軌道位置の変位)を評価した事例です。
掘削により地盤の一部が取り除かれることで、取り除かれた地盤が負担していた応力を周囲の地盤に負担させることで、掘削における状態変化を再現します。施工段階ごとにモデルの形状や境界条件を変更しながら変形・応力状態の変遷を表現しています。
現況再現から掘削・埋戻しの各工事段階における評価のイメージを以下に示します。
現況再現から掘削・埋戻しの各工事段階における評価イメージ
解析結果を以下に示します。
(左)現況応力の再現 /(右)地盤掘削段階の地盤変位(水平)
各工程での軌道位置の変位を以下に示します。
各工程での軌道位置の変位
この事例のように施工段階ごとに評価する方法のほかに、
- モデルを変えずに盛土を重量として載荷して評価する方法
- 掘削による状態変化を「掘削前の自重載荷」と「掘削後の自重載荷」の結果差分で評価する方法
など、さまざまな評価方法があります。
評価の目的に応じて、適切な方法をご提案します。
事例② 開削工事にともなう既設シールドトンネルへの影響評価
開削工事に伴う既設シールドトンネルへの影響を、施工ステップ(シールド掘削→セグメント設置など)を考慮した2次元FEM解析により検討した事例です。
開削工事にともなう既設シールドトンネルへの影響評価
事例③ トンネルの交差影響検討
既設トンネルの上部に新設トンネル2本が施工される場合の既設トンネルに及ぼす影響を検討した事例です。トンネルが斜交しているため3次元FEM解析を用いました。
トンネルの交差影響検討
モデル化の違いによる影響
2次元解析と3次元解析の違い
2次元解析では3次元効果が考慮されないため、一般的に安全側(変位が大きく算定される)の評価となります。ただし、奥行方向に同一条件が連続する場合は、2次元解析と3次元解析の結果は同じとなります。
3次元解析は実現象に近い結果となるため、2次元解析での評価結果が厳しい場合や、2次元解析で表現できない条件(例:交差するトンネル(事例③))の場合に用います。
以下では、2次元解析と3次元解析による比較を行った事例をご紹介します。
事例④ 盛土工事と掘削工事による地下鉄施設への影響評価
盛土工事と掘削工事を行った場合の地下鉄施設への影響を評価した事例です。
まず、地下鉄施設に隣接した盛土工事(①)を行い、次に掘削工事(②)を行いました。①および②による地盤変形を2次元FEMモデルおよび3次元FEMモデルで解析的に評価し、モデル化の違いによる影響を比較・検証しました。
検討対象
解析モデル図
①盛土施工
盛土工事の施工段階ごとにモデル化し解析を行います。以下に盛土施工が完了し上載荷重を追加した最終段階の2次元モデルと3次元モデルを示します。
盛土施工後の2次元モデル図
盛土施工後の3次元モデル図
②掘削施工
次に、掘削施工が完了した最終段階の2次元と3次元のモデル図を示します。
掘削完了後の2次元モデル図
掘削完了後の3次元モデル図
解析結果
①盛土施工後
盛土施工後の2次元モデルと3次元モデルの解析結果の比較です。赤字は地下鉄施設の評価地点における変位(単位:mm)です。
盛土施工後の解析結果(2次元モデル)
盛土施工後の解析結果(3次元モデル)
盛土施工後の段階では、奥行方向に同一条件が連続するため、2次元解析と3次元解析の結果に差がないことが分かります。
②掘削施工後
次に、掘削施工後の地下鉄施設の評価点における変位を示します。
掘削施工後の解析結果(2次元モデル)
掘削施工後の解析結果(3次元モデル)
2次元解析では3次元効果が考慮されないため、2次元解析結果の変位が大きく算定されていることが分かります。
このように、近接施工の影響解析を実施する際には、評価対象や施工条件、解析コスト(期間・費用)などを考慮し、合理的な解析モデルで実施することが重要です。
近接施工の影響解析コンサルティングサービス
構造計画研究所では、建築・土木分野の豊富な業務経験と、構造物と地盤にかかわる高度な解析技術で、様々な構造物、施工条件下での近接施工の影響評価コンサルティングサービスを提供しています。
最近の実績
- 駅付近ビル建設時の近接施工解析
- 杭の撤去による近接施工影響検討
- 鋼管圧入による近接施工影響検討
- 河川敷の施工時における影響検討
- 道路/地下鉄/JR付近での上下水道設備工事の影響検討
- 道路/地下鉄/JR付近での盛土近接施工
- 送電鉄塔への近接施工影響検討
- 近接施工による隧道への影響評価解析
- 近接施工の地震時影響検討(施工段階の全体応力解析)
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- 地盤と構造物の2次元動的相互作用解析プログラム SuperFLUSH/2D
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