地震 記事

能登半島地震の被害の可視化(その2)

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はじめに

前回は、能登半島地震による土砂災害の範囲をQGISを使って確認しました。

今回は、地震発生以前に想定されていた土砂災害警戒区域に着目します。

ツールは引き続きQGISを使用し、背景地図には地理院タイルを使います。

土砂災害警戒区域の確認

土砂災害警戒区域データは国土数値情報で公開されているので、これをダウンロードします。なお、本データは、「オープンデータとしての利用可(商用利用可・再配信可)」として公開されています。

ダウンロードしたデータをQGISの画面にドラッグアンドドロップし、表示させます(shpファイルとgeojsonファイルがありますがどちらもよいです)。

橙色が土砂災害警戒区域です(能登半島地震による土砂災害範囲は非表示にしています)。

能登半島では、警戒区域が点在していますが、能登半島北側に位置する輪島市では比較的目立ちます。

QGISではデータに含まれる属性に応じて見た目を簡単に変えることが可能です。
例えば、土砂災害警戒区域には「現象の種類(A33_001)」という属性が付与されており、現象種別のコードは次の通りです。

コード種類
1急傾斜地の崩壊
2土石流
3地すべり

現象の種類ごとに色分けしてみます。

手順は以下のとおりです。
レイヤを右クリックして「プロパティ」を選択します。
すると、レイヤプロパティが表示されるので「シンボロジ」を選択します。

「単一定義」を「カテゴリ値による定義」に変更し、値を「A33_001」にします。
カラーランプは「Random colors」のままです。

次に、下部にある「分類」をクリックすると、属性の値に応じて適当な色が割り当てられます。
割り当てられた色がわかりにくい場合は、適宜「シンボル」から変更可能です。

ここでは、
1(急傾斜地の崩壊)→赤
2(土石流)→青
3(地滑り)→緑
としました。

また、現象の種類は1,2,3以外の値を取らないはずなので、今回は「その他の値」は削除しておきます(対象を選択し、下部のマイナスボタンをクリック)。

凡例部分は、番号のままだとわかりにくいので、元の定義(例:1は急傾斜地の崩壊)に変えておきます。
これは、各行の凡例部分をダブルクリックで編集可能です。

ここまで編集できたらOKをクリックします。

色分けされた土砂災害警戒区域は以下のようになります。

能登半島では、地滑りのエリア(緑)が比較的多く見られることがわかります。
なお、左のレイヤウィンドウのチェックマークから任意の現象(レイヤ)だけを表示させることも可能です。

以下は、一部を拡大表示させた例です。

実際の被害範囲と地震前に想定された危険区域の比較

前回の記事で確認した能登半島地震による土砂災害範囲に、前述の土砂災害警戒区域を重ねてみます。

以下は、輪島市町野付近を拡大しています。
ピンクは能登半島地震による土砂災害範囲、赤は土砂災害警戒区域のうち急傾斜地の崩壊が懸念されるエリアです。

これを見ると、実際の土砂災害範囲と急傾斜地の崩壊が懸念されるエリアは、ほとんど対応していないことがわかります。

同様に、実際の土砂災害範囲と土砂災害警戒区域のうち地滑りが懸念されるエリア(緑)を比較してみます。
こちらに関してもあまり対応していないように見えます。

なお、「時国氏庭園」東側の山間部は、土砂災害危険区域に指定されていませんが、能登半島地震では広い範囲で被害があったことがわかります(以下の画像のピンクが被害エリア)。

これに関しては、土砂災害危険区域の設定は人家があるような場所を優先しているなどの事情があるのかもしれません。

また、前回の記事で着目した沿岸の国道249号の一部を、再び拡大して見てみます。
海岸沿いの橙色の道路が国道249号です。

ピンクが実際の被害範囲、それ以外が土砂災害危険区域なので、この地域だけ見ると、ちょうど土砂災害危険区域ではない部分で土砂災害が起こったことになります。

この被害があった箇所の一部は「逢坂トンネル」であり、先程の理屈で言えば、この付近は人家がなかったため、危険区域から外れていたのかもしれません。

このような例があるので、危険区域に指定されていないエリア=安心とは限らないと言えます。
(逢坂トンネル付近は、等高線が密になっており、比較的急な斜面を有していそうだけど、危険ではないのだろうか?と考えてみるのも重要かもしれません。)

まとめ

今回は、地震発生以前に想定されていた土砂災害危険区域をQGIS上に表示し、能登半島地震による土砂災害範囲と重ねてみました。

次回は、能登半島地震による地震動(震度分布)を確認予定です。

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