地震 記事

能登半島地震の被害の可視化(その3)

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はじめに

前回は、地震発生以前に想定されていた土砂災害危険区域をQGIS上に表示し、能登半島地震による土砂災害範囲と比較してみました。

今回は、能登半島地震による地震動を確認してみます。

ツールは引き続きQGISを使用し、背景地図には地理院タイルを使います。

能登半島地震による震度分布

能登半島地震による震度は気象庁から公開されています。

気象庁の震度分布図は、上記のような画面を画像ファイル(png)として出力はできますが、GISファイル(shapefile等)として取得できないので、今回は別のソースを参照します。

弊社(構造計画研究所)では、QUIET+というサービスを展開しています。

QUIET+(クワイエットプラス:QUick Identification of Earthquake Threat PLUS)は、地震記録を用いて日本全国250mメッシュの分解能で計測震度相当値、地表最大加速度、地表最大速度を推定し、その結果を提供しています。

そこで、今回はQUIET+より得られる計測震度相当値を利用します。

なお、QUIET+は能登半島地震の被害報告(防災クロスビュー国交省の報告日本地すべり学会の報告など)でも引用されています。

QUIET+のデータ取得画面の例は以下です。
ここでは能登半島地震による計測震度相当値の分布を表示させています。

画面左の地震リストに「計測震度」ボタンがあるので、ここをクリックすると、計測震度相当値のデータがダウンロードされます。ファイル形式はGeoTIFFです。

「確定報」では計測震度相当値だけでなく、地表最大加速度(PGA)、地表最大速度(PGV)の情報も含まれていますが、今回は使用しません。

取得したGeoTIFFをQGISで表示させると以下のようになります。

取得したデータは、バンド1に計測震度相当値、バンド2にPGA、バンド3にPGVが設定されていますが、以降では計測震度相当値の値ごとに色分けしていきます。

最初に、元の値(ピクセル値=DN)を計測震度相当値(INT)に変換します。
変換式は以下です。

INT=0.0256917*DN + 0.4743083

DNが0の地域はINTの値が0.5以下、254は7以上、255は水域など計算できない地域になります。

QGISでは各バンドの値を使って計算ができる機能があるので、上記の式に従って、計測震度相当値のレイヤを作成します。

QGIS上部の「ラスタ」から「ラスタ計算機」をクリックします。
すると、以下のような画面が表示されます。

下部の「式」のところに前述の式を記入します。

式にバンドを含めたい場合は、バンド名を直接入力しても大丈夫ですが、「バンド」に表示されている対象バンドをダブルクリックすると自動で入力されるので便利です。

上部の「出力レイヤ」のところで適当な出力ファイルを設定して、最後にOKをクリックします。
すると、以下のように計測震度相当値のレイヤが表示されます。

グレースケールだとわかりにくいので、ここから色を付けていきます。

前回の記事で紹介したように、レイヤプロパティのシンボロジを参照します。

最初の設定は、次の通りです(ひとつの例です)。

レンダリングタイプ:単バンド擬似カラー
内挿:離散値
カラーランプ:なんでもいい
モード:等間隔分類
クラス:11

計測震度と震度の対応は以下のようになっているので、これに従って、各値を編集します。

色は、気象庁が定義しているものでもいいですが、ここでは簡単のために震度が大きいほど暖色系、小さいほど寒色系になるように適当に設定します。

QUIET+では、計測震度相当値が7.0256918…の場合(元の値が255に相当)は水域などで値がない地域なので、ここではざっくり7以上のときは、色を透明に設定しています。
ラベルは、対応する震度の値にします。

すべて設定してOKをクリックすると以下のようになります。

ついでに、震央もプロットしてみます。

最初に、震央の緯度経度情報を入力したcsvファイルを用意しておきます。
緯度経度は気象庁の震源リストを参照しました。

ファイルのヘッダー名はなんでもいいですが、緯度経度のところはlat, lonなどにしておくと、QGISに読み込んだときに自動でx, y座標を設定してくれます。

次に、QGIS上部の「レイヤ」→「データソースマネージャ」をクリックします。

さきほどのcsvファイルを選択し、適当なレイヤ名をつけます。
あとは基本的にデフォルトのままで、「追加」→「閉じる」をクリックします(X値、Y値があってなければ正しいものを選択する)。

震央のマーカーの見た目をシンボロジから調整し、見やすくしたのが以下です(ついでに震度レイヤーの透明度も調整しています)。
黄色の丸が震央です。

震央付近の能登半島先端は震度6強(赤)で、震央から離れて南下していくとおおよそ震度6弱(橙)、震度5強(黃)と小さくなっていきます。

ただし、震度は震央からの距離に応じて綺麗に減少していません。

これは、ある地震に着目したときの揺れの強さは、距離だけでなく、地点直下の地盤に地震波が到達するまでに通ってきた地層の物性値にも左右されるためです。

例えば、能登半島西部の大半は震度6弱(橙)ですが、能登半島西岸に面する志賀町付近では、震度6強(赤)、震度7(紫)を示しており、部分的に揺れが大きくなっています。

まとめ

今回は、能登半島地震による震度分布を確認しました。

次回は、震度分布と土砂災害範囲の比較を行う予定です。

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