どれくらいの揺れで物は倒れるの?(2)では、身近にある薄型テレビが地震時にどんな動きをするのか、また、どのくらいの揺れで倒れるのかについてご紹介しました。今回の記事では、このテレビを固定した場合の挙動や固定する時の注意点をシミュレーションを用いて検討した事例をご紹介したいと思います。
この記事の内容は、東京工業大学翠川研究室とKKEの共同研究成果「正月俊行: 長周期地震動による超高層建物での家具の地震時挙動と室内被害把握, 2015年2月」の抜粋です。
計算モデル
以下のような家具の固定や滑り止め対策を実施した部屋を想定してみます。超高層マンションを想定しているのでかなり広い部屋です。リビングの右下にテレビ台とテレビがあります。テレビとテレビ台は固定されていますが、テレビ台と床は固定されていません。なお、強い長周期地震動を受けると、 超高層建物上階の揺れは片振幅1m以上になる場合があります。このような揺れに見舞われた場合、室内の家具も大きく動き、人が重い家具に衝突したり挟まれたりする恐れがあります。このような被害を軽減するために「滑り止め追加」という対策を想定しています。
揺れの想定
今回は床の揺れとして以下のような波を想定します。30階建ての超高層建物が長周期地震動を受けた場合を想定し、周期3秒の正弦波にテーパーをつけています。今後想定されうる最大レベルを想定して振幅は最大速度300cm/s(最大変位は約1.4m)としており、継続時間は5分間です。加振方向については、水平2方向入力です。
シミュレーション結果
シミュレーション結果は以下のようになります。「摩擦係数0.6」という文字は、「滑り止め対策を想定して摩擦係数を大きめの値に設定している」という意味です。赤破線で囲っているのがテレビとテレビ台ですが、60秒時点でテレビ台ごと転倒してしまっているのが分かります。テレビが台の上に固定されることで、テレビ+テレビ台全体としては重心が高くなり、転倒しやすくなってしまったことが原因と考えられます。テレビを何らかの台に固定する場合は、台の転倒対策もした方がよいということが分かります。今回の想定では、滑り止めにより倒れやすい条件になってはいますが、滑り止めがなくても同じ状況になる恐れがあります。
まとめ
今回の記事では、薄型テレビの挙動について、テレビを台に固定した場合の挙動や固定する時の注意点をシミュレーションにより検討した事例をご紹介しました。