河川構造物の耐震評価
南海トラフ地震や首都直下型地震など、大規模地震の発生確率は年々高まっており、その対策が急がれています。
河川構造物では、耐震性能照査指針が規定されており、レベル2地震相当の大規模地震に対する安全性の確保が求められています。
構造計画研究所では、シミュレーション技術を活用した河川構造物の耐震性能照査や耐震補強検討支援など、目的に応じた柔軟かつ適切なエンジニアリングサービスを提供しています。
河川構造物の耐震評価・エンジニアリングサービスの概要
対象となる河川構造物
- 水門、樋門・樋菅、堰
- 揚排水機場(ポンプ場)
- 堤防・特殊堤
- ダム
サービスの概要
対象となる河川構造物について、「河川構造物の耐震性能照査指針・解説」に準拠したレベル2地震に対する耐震性能照査を行います。新設のほか、既設構造物の現況照査や補強設計のための様々な解析的検討を行います。
また、河川構造物と一体的に建設されている管理棟、機械棟などの建築物については、建築基準法に準拠した耐震診断、補強設計を行います。
エンジニアリングコンサルティングメニュー
- 河川構造物の耐震解析(耐震性能照査・補強検討支援)
- 地中構造物の地盤・構造物連成解析
- 地盤(堤防)の液状化解析(ALID/ FLIP等)
- 構造物の建設による流況・河床変動の影響評価
- 堤防決壊による河川氾濫解析
- 上屋建物(建築部)の耐震診断・補強設計
事例1|応答震度法による排水機場の耐震性能照査
河川構造物の耐震性能照査事例として、応答震度法を用いて排水機場のレベル2地震に対する耐震性能照査を行った事例をご紹介します。
揚排水機場のレベル2地震に対する耐震性能
揚排水機場は取水や排水といった治水・利水上の機能を有し、レベル2地震に対しても揚排水機場としての機能を保持することや応急復旧等により速やかに回復できることが求められます。
揚排水機場のレベル2地震に対する耐震性能照査は、国土交通省の「河川構造物の耐震性能指針・解説Ⅴ. 揚排水機場編(平成24年2月)」にもとづいて行われるのが一般的です。
揚排水機場の構成
揚排水機場は、機場本体のほか、機場上屋、ポンプなどの設備、吐出水槽、樋門などで構成されています。一般的に、機場本体は地表面より下に存在し地中構造物になります。
ここでは、機場本体を対象とした事例をご紹介します。
耐震性能の評価方法
地中構造物である機場本体のレベル2地震に対する耐震性能照査では、地震時の地盤からの作用力を評価する必要があります。
代表的な評価方法は以下の3タイプです。
①震度法 | :地盤からの作用力を荷重で評価する方法 |
②応答変位法 | :地盤の変形量を躯体に作用させる方法 |
③応答震度法 | :地盤と躯体を一体でモデル化し、地盤部分の地震力を規定する方法 |
このうち、地盤変位の影響が支配的な場合は、応答変位法、または応答震度法を用います。
応答変位法と応答震度法のイメージ図を以下に示します。
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応答変位法 | 応答震度法 |
応答変位法と応答震度法のイメージ図
応答震度法の特徴
一般的に、応答震度法は応答変位法に比べ、より精度よく実現象を再現することができます。その一方で、モデル化や評価には、より高度な技術力が必要になります。
応答震度法の特徴は以下のとおりです。
- 地中構造物周辺の地盤構成が複雑な場合や、構造物と地盤の動的相互作用をより正確に考慮する場合に用いる
- 地盤をばね要素ではなく平面ひずみ要素でモデル化する
- 地震時の地盤慣性力を解析モデルの各要素に与えることで、地震時の地盤変位を解析モデル上で再現する
解析モデル
機場本体を梁要素で、地盤部分を平面ひずみ要素で評価した2次元FEMモデルとします。
機場本体のモデル化
頂版・底版・側壁・隔壁を梁要素(非線形)でモデル化します。
上屋部分 | :モデル化せず荷重として評価する |
機器荷重 | :集中荷重、分布荷重で評価する |
曲げ耐力/せん断耐力 | :「道路橋示方書V耐震設計編(平成14年3月)」より算定する |
地盤部分のモデル化
平面ひずみ要素(線形)でモデル化します。
鉛直方向 | :N値50以上のDg層下端までの範囲とする |
水平方向 | :機場本体の幅の約3倍の領域を機場本体の左右に設ける |
境界条件 | :側方:水平ローラー/下方:固定 |
解析モデル図を以下に示します。

機場本体の解析モデル(応答震度法モデル)
地盤部分の地震力の設定方法
地盤部分の地震力の設定方法には、代表的な方法として以下の2つがあります。
① 地盤の動的解析により設定する方法
成層地盤モデルの工学的基盤に入力地震動(基盤波)を設定して、地盤応答計算(代表的な計算プログラム:SHAKE)を行い、地盤部に作用する地震力を設定します。
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成層地盤モデル | ひずみ依存特性 |
地盤の1次元動的非線形解析
② 地表面での水平震度を規定し深度に従って減少していく方法
「土木研究所資料 第3119号 大規模地下構造物の耐震設計法・ガイドライン(案)1992年3月」にもとづいて応答震度法モデルの地盤部の水平震度の地盤深さの分布を算定します。

地盤部の水平震度の地盤深さの分布
応答震度法による排水機場の解析結果
解析結果の概要を以下に示します。
機場本体と地盤の変形図

変形図
機場本体の発生断面力図

発生断面力図(左:曲げモーメント/右:せん断力)
機場本体のレベル2照査結果


レベル2照査結果例
河川構造物の耐震評価事例として、排水機場本体のレベル2地震に対する耐震性能照査を応答震度法を用いて行った事例をご紹介しました。
対象構造物の構造特性や地盤特性、地域特性などに応じて、動的照査法(時刻歴応答解析)や地盤の液状化解析(有効応力解析)など、より詳細な検討も行っています。
また、河川構造物と一体的に建設された上屋建物(管理棟、機械棟など)については、建築基準法に準拠した耐震診断、補強設計も行っています。
事例2|堤防の液状化検討
液状化を考慮した堤防の耐震性能を評価した事例です。
2次元FEM解析により地盤と堤防をモデル化し、液状化対象層を指定して液状化発生の有無と地盤の影響を考慮した堤防の成立性を検討しています。検討内容に応じて、FLIP、ALIDなどの各種ソルバを用いて解析を行います。
解析結果を以下に示します。

液状化抵抗率:FL値(レベル2-1地震)

液状化抵抗率:FL値(レベル2-2地震)
事例3|旧指針で設計された排水機場の耐震補強
下部が排水設備、上部が管理棟や機械棟になっている河川の排水機場は、一つの構造物の中に土木と建築の設計指針の適用箇所が混在している「土木・建築一体構造」です。
下部構造(排水機部)は河川構造物の耐震設計指針、上部構造(管理棟、機械棟など)は建築基準法に準拠して耐震計算を実施する必要があります。
設計クライテリアの設定
排水圧等の特殊要素も勘案した詳細なFEM解析、振動解析等を実施し、解析結果に基づき設計クライテリアを設定しました。上部構造と下部構造は別々にモデル化して構造解析を行い、両者の境界での反力の受け渡しで関連付けています。
施工コストを考慮した改修計画の提案
通常の建築耐震診断に基づくと補強量が膨大になるため、用途・部分ごとの剛性を分析し、部材ごとに必要最低限の改修計画を提案しました。
また、上部構造(建築部)について補強ではなく構造種別をRC造からS造に変更して再構築することを提案した事例では、上部の軽量化により基礎構造の負担を軽減し、建築工事コスト、土木工事コストとも削減することが出来ました。
河川防災・エンジニアリングサービスの特長
建築構造設計と土木解析技術を融合したエンジニアリングサービス
構造計画研究所は、建築の構造設計はもちろんのこと、電力・プラント、鉄道・道路などの交通インフラ、河川・上下水道などの社会インフラといった様々な土木構造物の解析的検討の実績を積んでまいりました。
長年に渡って培ってきた建築の構造設計技術と、土木構造物の解析技術を融合し、土木と建築が一体となった複合構造物の耐震検討にも柔軟に対応することができます。※

建築の構造設計技術と土木構造物の解析技術を融合したエンジニアリングサービス
※構造計画研究所には建築の構造設計部門はありますが、建築の意匠設計部門や土木設計部門はありません。土木構造物に関しては構造、地盤、流体などを対象とした解析コンサルティングをご提供しています。
最先端の数理工学・流体解析技術を活用した水害対策支援
近年激甚化している台風や豪雨などの風水害に対しては、
- 河川の流況、氾濫、河床変動解析
- 数理工学を活用した河川水位予測システム「RiverCast」
など、大学・研究機関とも連携し最先端の技術を用いて、河川の水害対策を支援しています。

iRIC(Nays2DH)を用いた河床変動解析例

リアルタイム洪水予測システム RiverCast
センシング・データ分析技術を活用した予防保全の高度化支援
建築構造や地盤を対象としたシミュレーション技術に加え、センシングやAI・データ分析技術を活用し、構造物の異常診断や予兆検知など、予防保全の高度化に取り組んでいます。
関連ページ
河川防災
土木構造物の耐震評価
地震動評価
建築物の耐震診断・補強設計
予防保全
関連ソフトウェア
- 汎用非線形解析プログラム RESP-T
- 成層地盤の地震応答解析プログラム k-SHAKE+
- 模擬地震波作成プログラム ARTEQ
- 波形処理プログラム k-WAVE
- 地盤と構造物の動的相互作用解析プログラム SuperFLUSH/2D
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