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模型実験における相似則 | KKE解析技術者ブログ|構造計画研究所

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模型実験における相似則

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はじめに

地震を受ける地盤-構造物系など、自然現象を捉えるための有効な手段の一つに模型実験がある。模型実験では実大スケールの構造物を取り扱う必要がなくなるため、効率的な自然現象の把握が可能となる。一方、模型の作成は自由に行えるわけではなく、一定の規則に従って実施しなければならない。この規則は一般に相似則と呼ばれている。ここでは、模型実験における相似則の考え方と適用に関する留意点をまとめることとする。

相似則の考え方

実スケールにおいて地震動が入力する場合の運動方程式を立てると、以下のように表現される。

\(M_p\frac{d^2x_p}{dt_p^2}+C_p\frac{dx_p}{dt_p}+R_p=-M_p\frac{d^2u_p}{dt_p^2}\tag{1}\)

下添字\(p\)は実スケール、\(m\)は模型スケールであることを表す。また、\(M\)は質量、\(C\)は減衰、\(R\)は復元力であり、\(x\)は系の応答変位、\(u\)は入力地震動の地動変位である。実スケールと模型スケールの物理量の関係は、係数\(α\)を用いて以下のように表される。

\(x_p=α_ιx_m\),      \(u_p=α_ιu_m\)
 \(t_p=α_tt_m\),     \(M_p=α_mM_m\)
\(R_p=α_rR_m\),     \(C_p=α_cC_m\)

ここで、\(α_ι\)が長さ、\(α_t\)が時間、\(α_m\)が質量、\(α_r\)が力、\(α_c\)が減衰の相似比を表している。これを運動方程式に代入して整理すると、

\(\left(\frac{α_m・α_ι}{α_t^2}\right)M_m\frac{d^2x_m}{dt_m^2}+\left(\frac{α_c・α_ι}{α_t}\right)C_m\frac{dx_m}{dt_m}+α_rR_m=-\left(\frac{α_m・α_ι}{α_t^2}\right)M_m\frac{d^2u_m}{dt_m^2}\tag{2}\)

上式は模型スケールにおける運動方程式であり、各項の係数が等しければ実スケールにおける運動方程式と等価となる。すなわち、

\(\frac{α_m・α_ι}{α_t^2}=\frac{α_c・α_ι}{α_t}=α_r\tag{3}\)

が成立すればよい。

ここで、模型実験において実スケールの\(\frac{1}{n}\)の模型を使用する場合を考える。このとき、\(α_ι=n\)となり、同一材料を使用するとき\(α_m=n^3\)となる。異なる材料を使用する場合はこの限りではないが、一般に代替となる材料を見つけることは難しいため、ここでは同一材料を使用するとして話を進める。また、模型スケールで実スケールの挙動を評価するためには、部材内部の応力状態が同一でなければならない。幾何学的な関係より面積比は\(n^2\)となることに注意すると、\(α_r=n^2\)となることがわかる。したがって、上式は一部が書き換わり、以下のように表記される。

\(\frac{n^4}{α_t^2}=\frac{α_c・n}{α_t}=n^2\tag{4}\)

したがって、本式より\(α_t=n\),\(α_c=n^2\)とすれば力学的に等価な模型実験を実施することができる。

【振動台実験など、\(1G\)場で実験を行う場合】
\(1G\)場では実スケールと模型スケールで物体に作用する重力加速度が同一である。したがって、加速度の相似比が1に固定される。そのため、\(\frac{α_ι}{α_t^2}=1\)の関係は変えることができない。言い換えれば、\(α_t=\sqrt{n}\)に固定されるということである。これは、明らかに(4)式に示す関係を満たさなくなる。そこで、(3)式の\(α_m=n^3\) という関係を見直すこととする。再度(3)式に立ち戻り、\(α_ι=n\),\(α_t=\sqrt{n}\),\(α_r=n^2\)を代入して整理すると、

\(α_m=α_c\sqrt{n}=n^2\tag{5}\)

となる。ゆえに、\(1G\)場での模型実験では、模型の重量に加え付加質量を設置することで強制的に\(α_m=n^2\)を満たす方法がとられる。

【遠心力載荷装置など、模型実験における作用重力そのものを変える場合】
例えば、遠心力載荷装置により\(1G\)場の\(n\)倍の重力加速度を作用させたとき(これを遠心場と呼ぶ)、加速度に関する模型スケールと実スケールの相似比は以下の通りとなる。

\(\frac{α_ι}{α_t^2}=\frac{1}{n}\tag{6}\)

無論、\(α_ι=n\)であることから、\(α_t=n\)であることが分かる。また、このとき(3)式が満たされることもわかる。すなわち、遠心場を用いた模型実験では、模型に付加質量の付与などを行うことなく、かつ部材内部の応力状態が実スケールと等しい状態での挙動評価を行うことが可能となる。

遠心場では\(α_t=n\)となることに大きな特徴がある。すなわち、遠心場と実物では時間の概念が異なり 実物での1秒は遠心場では\(1/n\)秒となる。この特性を生かした実験の一つに、地盤の圧密を考慮した振動実験が挙げられる。地盤の圧密は一般に時間を要する現象であるが、遠心場を活用することにより、応力状態を変えることなく圧密にかかる時間を\(1/n\)に削減することが可能となる。ただし、この概念は入力地震動にも適用されることに注意が 必要である。すなわち、加振に用いる入力加速度は時間を\(1/n\)、加速度を\(n\)倍とした波形を 準備することが必要である。

まとめ

本コラムでは、模型実験を適用する際に留意すべき相似則の考え方について整理を行った。この内容は筆者の大学時代の研究の基本となっている部分をまとめたものである。

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