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超高層建物の施工段階解析

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なぜ施工段階解析が必要か

近年、超高層建築物はさらに高層化を続けています。本記事を書いている段階では、地上390mの超高層ビルが計画されています。超高層建築物は高さ60mを超える建物のことを言いますが、その6倍を超える建物が計画されているということになります。

建物を施工する場合にはもちろん、建設地点にて部材を少しずつ組み立てていくことで建物が出来上がっていきます。そのため、部材が組み上がっていくにつれて荷重も増加していく、ということになります。一方、設計時に用いる解析モデルはすべての部材が完成した状態ですべての荷重を一気に載荷するような計算方法とすることが一般的です。

このような仮定は実際の施工時の状態とは異なるものの、小さい規模であればそれほど問題とはされてきませんでした。しかしながら、規模が大きくなってくるとこの仮定の違いによる影響は大きくなってきます。

加えて、このような規模の建物は地下階も存在し、工期短縮のために逆打ち工法を採用することもよくあります。逆打ち工法の場合、下層から施工するのではなく、地上と地下を同時に施工していく形になります。逆打ち工法ではまず、構真柱と呼ばれる柱を施工して杭と接続することにより、建物の重量を杭に伝達できるようにします。この状態で地上階の建設を進めながら地下階も施工していくことになります。したがって、地下階が完全に出来上がる前の状態で、地上階の施工ステージに応じて増加してくる重量を支える必要があります。これは設計時には考慮していない荷重状態となります。

RESPによる施工段階解析

私達の開発している構造計算プログラム RESP では、施工時解析のための機能として部材の生成・消去の機能が搭載されています。この機能を使うことで、先程紹介したような逆打ち工法のような状況をより現実に近いモデルで表現することができます。

なお、RESPは超高層評定でよく使われているプログラムでもあります。超高層建物の設計で使われているモデルから、そのままシームレスに施工時解析が実施することができます。なお、RESP以外の構造計算プログラムで作られたモデルがある場合は、ST-BRIDGEのデータ連携によりRESPのモデルを作成すれば、スムーズにRESPの施工時解析を行うことも可能です。

試解析による影響検討

あくまでサンプルのモデルですが、試検討を行ってみました。地下3階SRC、地上25階S造のモデルを想定しています。

今回は試しに、3つのステージに分割して施工時解析を行ってみました。逆打ちを想定し、まず地下部分は鉄骨の構真柱を配置し、地下部分の柱・梁・壁を1FL、B1FL、B2FL、... といった順序で部材生成していきます。

同時に、地上階もステージごとに上に積み上げていきます。

解析結果の支点反力図を比較してみます。このようなシンプルなモデルでも5%程度の乖離が生じます。傾向としては、外周部の反力は施工段階解析のほうが小さく、中央部は増加しています。施工の序盤ステージでは構真柱により鉛直荷重を負担しますが、最初の時点では大梁が施工されていないため、通常解析では大梁によってある程度均一化されるはずの柱軸変形のばらつきが大きくなっているためと考えられます。実際の建物ではより施工手順が複雑ですので、場合によってはより大きな差が生じることもありえます。

通常解析(単位: kN)
施工段階解析(単位: kN)

また、施工時解析を行うと、構真柱に作用する軸力を求めることもできます。構真柱の状態では鉄骨部材のみ状態で上部構造軸力を支える必要があるため、完成したSRC柱で軸力を受ける場合とは違った判断が求められます。

以下に、最下階が構造真柱のみのステージにおける柱軸力と完成時の柱軸力を示します。完成時は柱の間に耐震壁の軸力も表示されています。

外周の柱軸力を見てみると、構真柱のみのステージでも完成時に対して40%程度もの軸力を負担しているような結果となっています。完成時には耐震壁が軸力を負担してくれますが、耐震壁施工前の状態では柱ですべて重量を支えなければならず、しかもこれを鉄骨断面のみで支えることになります。

このように、施工時の安全性を考えるとこのように実際の施工時に近い状態を想定して地下階柱の鉄骨断面を決定することが必要になります。

最下階構真柱のみのステージ
完成時

その他施工時検討

施工時解析で求められるのは、逆打ち工法のみではありません。

工区ごとの施工や、低層棟と高層棟の接続箇所の検討など現場に応じて考えるべきことは様々です。

こういった検討が、建物全体のモデルとして上部構造の検討と連続性のあるモデルにより、現実に近い仮定となる応力状態を検証できることがRESPを用いた施工時検討のメリットであると考えています。

工区を分けた施工
高層棟と低層棟の接続部の検討

まとめ

RESPでは、上部構造の設計モデルをそのまま利用して施工時解析が行なえます。それにより、従来の設計で用いる解析モデルと整合した検討をスムーズに行なえます。

なお、RESPシリーズのうち時刻歴応答解析向け統合構造計算システムRESP-Dでは、現状のリリースバージョンでは施工時解析については簡易な検討機能(下層から1層ずつ部材生成、荷重載荷)のみの公開となっています。3次元フレーム汎用解析プログラム RESP-F3Tではより詳細な設定まで行うことが可能ですが、やや入力が煩雑となります。

今回のような詳細な検討は解析コンサルティングサービスとしてお手伝いさせていただくことが可能です。

構造のさらなる合理化や、施工計画でお悩みの方はぜひご相談ください。

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