建築物のFEM解析による詳細検討

建築物の設計では、一般的にフレームモデルを用いた構造計算が行われますが、構造物の挙動や部材性能をより詳細に評価する場合には、有限要素法(FEM)解析が広く用いられています。
たとえば、柱、梁、壁などの部材単体や接合部の構造性能を詳細に評価する必要がある場合や、振動による衝突、落下などの現象を評価する場合にFEM解析が用いられています。
また近年、コンピュータの性能向上や技術の進歩により、大規模非線形FEM解析による評価も可能になってきています。

部分的な詳細検討の例

部分的な詳細検討の例

構造計画研究所では、建築物の通常の設計で検討される計算に加えて、より詳細な形状をモデル化したFEM解析を実施しています。実験の再現解析や工法の評価、評価結果に基づく対策のご提案など、さまざまなコンサルティングサービスを提供しています。

建築物のFEM解析による詳細検討|サービス概要

部材の詳細検討

柱梁接合部や梁の開口部など、建物の部分的な形状をFEMモデルで詳細に評価し、応力やひずみを把握します。コンクリートのひび割れ進展などの非線形特性を適切に考慮します。

柱梁接合部の変形評価
スラブの応力集中箇所の評価
吊り天井の地震時挙動評価
柱梁接合部の変形評価
スラブの応力集中箇所の評価
吊り天井の地震時挙動評価

施工時の構造安全性の検討

施工段階における構造安全性の検証や施工方法の検討をFEM解析により評価します。

耐衝撃・耐爆解析

長周期地震や台風による建物同士やエキスパンションジョイント、免震層の衝突、竜巻や噴火などによる飛来物の衝突、事故による爆風圧など、想定外の事象に対する構造安全性を評価します。

落下物を受ける梁の崩壊評価例

落下物を受ける梁の崩壊評価例


地盤と構造物の動的連成解析

液状化の可能性がある地域や特殊な地盤改良工事など、基礎構造に着目し、地盤と構造物の動的相互作用を考慮した解析を行います。また、基礎の合理的設計のための解析的検討や、建物のねじれ挙動を地盤ー杭ー建物系3次元FEM解析等で評価します。

近接施工の影響解析

開削工、基礎工、トンネル、盛土などの施工において、地盤の変形や施工振動にともなう近接構造物への影響予測解析を行い、影響の評価や評価結果に基づいた対策工法をご提案します。

環境振動の影響評価

鉄道振動による隣接建物の振動予測等を地盤ー構造物連成系の振動解析により評価します。3次元FEMや薄層要素法などを組み合わせて、課題や目的に応じた適切な評価方法をご提案します。

建築物のFEM解析による詳細検討|事例

建築物のFEM解析による詳細検討の事例をご紹介します。

事例1|RC造の柱梁接合部の実験を対象とした再現解析

RC造の柱梁接合部の実験を対象として再現解析を行った事例です。
解析結果を可視化することで、実験では確認が難しい部材内部の損傷状況や応力伝達機構などを確認できます。また、実験の再現性が確認されたモデル化・解析手法を用いて、実験を実施していないケースの解析を行うことで、実験で不足するケースを補完するような検討が可能となります。
解析モデル図を以下に示します。

解析モデル(RC柱梁接合部(コンクリート)) 解析モデル(RC柱梁接合部(鉄筋))

解析モデル(RC柱梁接合部(左:コンクリート/右:鉄筋))


解析結果を以下に示します。

解析結果(ひび割れ図)

解析結果(ひび割れ図)


解析結果(鉄筋応力) 解析結果(鉄筋応力)

解析結果(鉄筋応力)


接合部のFEM解析による検討例

  • RC柱-S梁の接合部を対象とした実験解析
  • H鋼柱梁接合部の非線形解析
  • 鋼管柱ブレース接合部の応力解析

事例2|梁開口の影響解析

RC梁に新たに開口を設けた場合の影響を評価した解析事例です。
解析モデル図を以下に示します。梁は平面応力要素でモデル化し、長さ方向は両端柱軸心の距離でモデル化します。設計時のフレームモデル計算結果に基づき、両端固定梁の分布荷重を計算し直します。新しい開口により梁がひび割れるか、構造的に成立するかを検討します。


解析モデル

解析モデル


解析結果図を以下に示します。

解析結果(変形図)

解析結果(変形図)

解析結果(引張主応力度)

解析結果(引張主応力度)

解析結果(圧縮主応力度)

解析結果(圧縮主応力度)


応力集中のFEM解析による評価例

  • 免震基礎設置のためのジャッキアップ配置解析
  • 段差や耐力壁の配置の違いによる応力集中
  • PC鋼の緊張力の有無による応力集中

事例3|施工段階における床版の応力解析

解体中の既設の床や、施工途中の新設床で一時的に土圧を支える場合の構造成立性を確認した事例です。
解析モデル図を以下に示します。床版をシェル要素でモデル化し、梁等はモデル化対象外としています。境界条件は下図のように設定し、物性に応じて色分け表示をしています。

解析モデル

解析モデル

解析結果図を以下に示します。

解析結果(変形図)

解析結果(変形図)

解析結果(引張主応力度)

解析結果(引張主応力度)

解析結果(圧縮主応力度)

解析結果(圧縮主応力度)


事例4|鉄筋コンクリートスラブに飛翔体が衝突した際のFEMによる損傷評価

飛翔体が鉄筋コンクリートスラブに衝突した際のシミュレーションを行った事例です。
ソリッド要素とビーム要素を用いてコンクリートスラブ、鉄筋および飛翔体をFEMでモデル化し、鉄筋とコンクリートの非線形特性を考慮した衝突解析を実施しました。

変形図(落下物を受ける鉄筋コンクリートスラブの崩壊)

変形図(落下物を受ける鉄筋コンクリートスラブの崩壊)


衝突・破壊シミュレーション例

  • 非線形動的FEM解析を用いたプラント建屋の耐爆評価
  • 噴石衝突時のコンクリート破壊シミュレーション
  • 落石による敷砂の衝撃挙動解析(個別要素法)

事例5|風車基礎構造に着目した地盤連成解析

地盤と構造物の相互作用を考慮するために風車・基礎・地盤を一体でモデル化し、風車と杭の応答を評価した事例です。
対称の成層地盤と仮定し、軸対称FEMモデルとしています。地盤は透過振動数を考慮したメッシュ分割として、逸散する地震波を表現できるモデル化領域を設定しています。

解析モデル

解析モデル

風車と杭の応答を柱状分布図で評価しました。

柱状分布図(風車の応答)

柱状分布図(風車の応答)


柱状分布図(杭の応答)

柱状分布図(杭の応答)


地盤ー構造物連成系のFEM解析例

  • 地盤ー基礎ー建物の連成を考慮した地震応答解析(3次元FEM+薄層要素法)
  • 傾斜地盤の影響による建物のねじれ挙動の評価(3次元FEM解析)
  • 地下構造物の3次元非線形解析(大規模FEM・RC非線形)

事例6|近接施工の影響解析

鉄道付近での掘削工事による地盤変形を解析的に検証し、掘削の影響を把握した事例です。
地盤と構造物の相互作用を適切にモデル化します。

鉄道付近での掘削による影響評価

鉄道付近での掘削による影響評価


近接施工の影響解析例

  • 駅付近ビル建設時の近接施工の影響検討
  • 鋼管圧入による近接施工の影響検討

事例7|環境振動の影響評価

振動源からの波の伝搬を解析的に検証し、建物や杭への影響を評価した事例です。
従来より用いられている簡単な経験式による検討手法では、振動源を1点水平/鉛直加振として評価します。しかし、実際の振動源は複雑であり、振動源の体積評価、地盤との接地面積、加振力の評価等により検討結果に差が生じます。
2次元FEMと3次元薄層要素法のハイブリッド法により、振動源や構造物と周辺地盤を適切に評価する事で精度の良い検討が行えます。この事例では、「建築物の振動に関する居住性能評価指針」(日本建築学会)との比較検討を行いました。

環境振動による建築物への影響評価イメージ

環境振動による建築物への影響評価イメージ


環境振動による影響評価例

  • 鉄道振動による隣接建物の振動予測解析

大規模FEMモデルによる詳細検討|事例

近年、コンピュータの性能向上や技術の進歩により、大規模FEMモデルでの非線形解析も可能になってきています。
ここでは、大規模FEMモデルを用いた検討事例をご紹介します。

事例1|傾斜地盤の影響による建物のねじれ挙動の評価

地盤傾斜の影響で免震建物への基礎入力が場所によって異なる建物のねじれ挙動を評価した事例です。
杭をはり要素、ラフトをシェル要素、地盤をソリッド要素でモデル化しました。杭とラフトは全て地盤と接合し、地盤の側方・底面は粘性境界で地盤の無限性を評価しました。

3次元FEMモデルを用いた解析法の概念図

3次元FEMモデルを用いた解析法の概念図


事例2|基礎の合理的設計の検討

逆打ち工法の採用と、杭と基礎版の応力負担割合を地盤ー杭ー建物連成系3次元FEM動的解析により評価し、基礎の合理的設計について検討した事例です。

地盤ー杭ー建物連成系の3次元動的解析の概念図

地盤ー杭ー建物連成系の3次元動的解析の概念図


事例3|地中構造物の3次元非線形解析(大規模FEM・RC非線形)

構造物と地盤の動的相互作用を考慮したRC地中ボックスカルバートの静的非線形解析事例です。
地盤とコンクリートを3次元ソリッド要素で、鉄筋はバイリニアの非線形特性を持つ平面応力要素でモデル化しました。節点数は100万節点程度とモデル規模がかなり大きくなります。解析エンジンは、オープンソースの構造解析プログラム FrontISTRをカスタマイズしたものを用いました。

地中構造物と地盤の大規模3次元FEMモデル

地中構造物と地盤の大規模3次元FEMモデル


    ※ FrontISTR は、文部科学省 次世代IT基盤構築のための研究開発「イノベーション基盤シミュレーションソフトウェアの研究開発」プロジェクトによる成果をシーズとして,FrontISTR研究会で継続的に開発されている並列有限要素解析プログラムです。

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