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コンクリートの水和熱を考慮した温度解析

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はじめに

熱の伝わり方には熱伝導、熱伝達、熱放射(熱輻射)の3種類が主に挙げられます。これらはそれぞれ熱が伝わるメカニズムが異なっており、温度解析を行う場合はどの現象を考慮すべきか判断する必要があります。

本記事ではこれら3種類の熱の伝わり方を考慮し、コンクリートの水和熱を対象に温度解析を行いました。コンクリートの水和熱とは、コンクリートが硬化する際に起こるセメントと水の化学反応(水和反応)により発生する熱のことです。規模が大きいコンクリート(マスコンクリート)では特に温度上昇が大きくなりやすく、温度変化に伴う体積変化によるひび割れの発生が懸念されます。

熱伝導・熱伝達・熱放射

冒頭に述べた3種類の熱の伝わり方について簡単に説明します。

熱伝導

熱伝導は固体や流体内の温度差により熱が移動する現象です。温度差があれば、違う物質間でも熱は移動します。熱伝導による熱の移動しやすさを表す物性値を熱伝導率と言います。熱伝導率は物質ごとに異なり、熱伝導率が高い物質は熱しやすく冷めやすい物質であると言えます。

熱伝導のイメージ

熱伝達

熱伝達は流体の流れ(対流)により熱が移動する現象です。熱伝達による熱の移動のしやすさは熱伝達率で表されます。熱伝達率は同じ物質でも周囲の流体の種類や対流速度や物質の形状などによって変化します。

熱伝達のイメージ

熱放射(熱輻射)

熱放射は電磁波により熱が伝わる現象です。高温の物質は内部エネルギーを電磁波として放出し、放出された電磁波は他の物質に到達すると内部エネルギーに変換され熱を発します。熱放射は媒体を必要としないため、真空中でも熱が伝わります。

全ての電磁波を完全に吸収できる理想的な物体を黒体と呼び、熱放射により黒体から放出されるエネルギーは絶対温度の4乗に比例するという法則があります。この法則をシュテファン・ボルツマンの法則、比例定数をシュテファン・ボルツマン定数と呼びます。実在する物体が熱放射により放出するエネルギーは黒体の場合より小さくなり、その比を放射率(輻射率)と呼びます。放射率は0以上1以下の値となります。

熱放射のイメージ

コンクリートの水和熱を模擬した温度解析

熱伝導解析プログラム「ADINA Thermal」(ADINA R&D, Inc.)を用いてコンクリートを対象とした2次元の温度解析を行ってみました。

幅1.0m、高さ0.5mのコンクリートの上に同じ寸法のコンクリートを打設するものとして、下の図の赤色の範囲に発熱を与えてコンクリート内の熱の伝わり方を解析しました。

解析モデル

まずは熱伝導のみを考慮した解析を行いました。

2017年制定コンクリート標準示方書[設計編](土木学会)を参考に、コンクリートの熱伝導率を2.6W/m℃、比熱を1.05kJ/kg℃としました。

コンクリートの初期温度は25℃とし、コンクリートの上半分(赤色の部分)には以下に示す発熱を与えました。コンクリートの水和熱の発生は打設後の2日ほどが大きくなるように設定しています。

発熱量

解析結果として温度コンター図を示します。最初は発熱を与えた上半分の温度が高く、その後、温度が低い下側に熱が移動することによりコンクリート全体の温度が均一になっていく様子が分かります。この解析では熱伝導しか考慮していないため、コンクリート内部でしか熱のやり取りが行われず、エネルギーはコンクリート内部にとどまり、時間がたってもコンクリート内部の温度は70℃程度と高い状態が続きます。

解析結果(熱伝導のみ考慮)

次に、熱伝導に加え熱伝達を考慮した温度解析を行いました。

熱伝達率として、コンクリート下面は14W/m2℃、側面は8 W/m2℃、上面は12 W/m2℃としました。これらの数値は2017年制定コンクリート標準示方書[設計編](土木学会)を参考に、下面は地盤、側面は型枠、上面は空気に接しているものとして設定しました。周辺の温度は下面を15℃、その他は20℃としました。

解析結果として温度コンター図を示します。熱伝導のみを考慮した場合と同様に最初は発熱を与えた上半分の温度が高くなりますが、温度差による熱伝導に加え、周囲への熱伝達によりコンクリート内の温度が均一になりながら低くなっていく様子が分かります。

解析結果(熱伝導、熱伝達を考慮)

最後に、熱伝導、熱伝達に加え熱放射を考慮した温度解析を行いました。

解析結果として温度コンター図を示します。熱伝導と熱伝達を考慮した場合と比べ、コンクリート内の温度低下がやや早く進みますが、20日後のコンクリートの最高温度を比較すると、熱放射を考慮しない場合は19.91℃、考慮した場合は19.81℃と同程度になります。また、全時刻での最大温度は熱放射を考慮しない場合は64.59℃、考慮した場合は60.69℃となり、その差は約7%でした。

一般的にコンクリートの温度解析において熱放射の影響は考慮しなくてよいと考えられていますが、最大温度においては多少の差があることが分かります。なお、熱放射を考慮しない場合の方が温度は高くなるのでコンクリートの温度解析においては考慮しない場合の方が安全側となります。

解析結果(熱伝導、熱伝達、熱放射を考慮)

まとめ

本記事では熱伝導解析プログラムを用いて、コンクリート内の温度差による熱伝導、周囲の空気等の流れによる熱伝達、電磁波による熱放射によりコンクリート内の温度がどのように変化するかを解析した事例を紹介しました。今回の解析では熱伝導や熱伝達に比べ熱放射の影響が小さいことが確認できました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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