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確率論的地震ハザード解析(その1) | KKE解析技術者ブログ|構造計画研究所

地震

確率論的地震ハザード解析(その1)

更新日:

はじめに

「首都圏にて今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は80%以上」
最近メディアでこんな言葉をよく耳にします。

このような「ある地点で特定の期間内にある地震動強さ以上になる確率」は、確率論的地震ハザード解析(Probabilistic Seismic Hazard Analysis; PSHA)
によって得ることができます。

将来発生する地震について、私達が知りたいのは
「いつ、どこで、どのくらいの揺れに見舞われるのか」ということです。
PSHAでは初めに対象地点を定めるので、考えるべきは、残りの「いつ;地震の発生時期」と「どのくらい;揺れの程度」です。

今回は、「地震の発生時期」について簡単に説明します。

地震はいつ発生するのか?

PSHAでは、地震の発生時期を「地震の発生確率」で評価します。
具体的には、今後X年間に地震が発生する確率を求めます。
ある期間内の地震の発生確率を求めるにはどんな情報が必要でしょうか?

それは、「地震がどれくらいの間隔で発生しているか(断層の活動間隔)」という情報です。
ここでは、「過去1000年の間に、ある地震が100年間隔で発生している」という単純な状況を仮定してみます(図1を参照。星は地震の発生を表しています。また、「地震の発生=岩盤に蓄積した歪みエネルギーの解放」とします)。

いま、私達は、10回の地震が100年間隔で発生しているという情報を持っています。そして、最後に地震が発生したのは、1930年であることも分かっています。

現在は2020年であり、対象としている地震は1930年以降発生していません。
これらの情報から、次に地震が発生するのは2030年頃であり、この地震の発生確率は非常に高いことが予想されます。

実際の地震発生確率もおおよそ上記のような考え方に基づいて算出されていますが、現実はそう上手くいきません。

図1 地震発生の模式図

地震の発生予測は難しい

上記の「単純な状況」が成立しているかを知るためには、少なくとも以下の条件が必要です。

  • 地震の発生間隔に比べて観測期間が十分に長いこと

図1で示した例は、「約1000年間、観測を続けたところ、きっかり100年間隔で地震が発生しているということが分かった」という例です。
地震の発生確率を見積もるためにはそもそもどのくらいの間隔で地震が発生しているかを知らなければなりません。

日本で近代的な地震観測網が整備されたのは、おおよそ1990年代以降です。
つまり、ある程度の精度が確保された観測期間はせいぜい30年程度ということになります(地震計自体の歴史も100年程度)。そのため、例えば数百年~数万年間隔で発生している地震の情報を、機器(地震計)だけで知ること困難であると言えます。

そこで、参照されるデータが歴史記録(古文書など)やトレンチ調査結果、津波堆積物です。これらを活用することで、地震による被害の程度や被害が大きかった地域、地震の発生場所・発生時期・規模が分かります。
ただし、その地震の発生場所(震源)・発生時期・規模の推定には大きな誤差が含まれることが常です。 また、発生間隔が分かったとしても、その間隔は一定ではないことが普通です。

南海トラフの地震

地震の発生時期(断層の活動時期)が複数回分かっている場合というのは稀ですが、例外の1つとして有名な地震が南海トラフの地震(図2の赤枠が想定される最大の震源域)です。図2で示した過去に起こった地震の時期の情報などから、地震調査研究推進本部では、南海トラフの地震の平均発生間隔(震源域のどこかで地震が発生する間隔)を88.2年と算出しています。

図2  「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)について(地震調査研究推進本部, 平成25年)」より引用

おわりに

今回は、地震の発生確率を求めるための情報として、地震の発生間隔について簡単に説明しました。 次回は、地震の発生間隔から地震の発生確率を求める方法について、もう少し定量的に説明したいと思います。

【参考文献】
・地震調査研究推進本部(2013)「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)について」  
 https://www.jishin.go.jp/main/chousa/kaikou_pdf/nankai_2.pdf 関連ページ

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