BimClipとは?
チームのコミュニケーションを目的とするグループウェアである「BimClip」というWebアプリケーションを 私たち防災・減災エンジニアグループで、提供していることをご存知でしょうか。
https://bimclip-product-kke.azurewebsites.net/
BimClipは元々、建築分野では近年急速に盛り上がっている「BIM(Building Information Model)」に対して、よりスムーズなコミュニケーションを行うためのシステムとなるべく開発しました。
BIMとは、これまで図面に描かれていた情報をすべて3次元の電子データとしてあらわし、さらに意匠、構造、設備など各種の図面に分かれて記述されていた情報をすべて1つのモデルデータ内に集約することを目指す取り組みです。一方で、電子化したとしても、実際に建物を作っていくうえで人と人とのコミュニケーションが極めて重要なのはこれまでと変わりません。
現実問題として、従来の図面によるコミュニケーションからの急な脱却はまだまだ多くの課題があります。そこで、システムに合わせて業務を変えるのではなく、業務に合わせてシステムを活用していくための橋渡し役となるべく開発したのがBimClipです 。
BimClipは現在、70社以上の会社、500名超のユーザーが利用しており、約300のプロジェクトが運用されています。
BimClipで最も重要なのは、BIMを意識しつつも、実際にはBIMデータよりも人のコミュニケーションに注目している点にあります。そういった背景もあり、実は構造計画研究所内では、建築に関係のないプロジェクトでかなり活用されています。今回はその活用事例をご紹介します。
その他のグループウェアとの違いは?
BimClipを説明するうえでよく聞かれるのが、「他にもたくさんこういうツールあるよね?」という意見です。確かに、同様の機能を持つツールは世の中にたくさんあります。ただ、多くの方が「同様の機能を持つツール」として挙げるツールも、何種類かの異なる目的のツールを挙げられる方が多いです。例えば以下のようなものがよく言われます。
- カレンダー機能を持つスケジュール管理ツール
- 線表を引くプロジェクト管理ツール
- TODOリストツール
- コミュニケーションのためのチャットツール
- ファイルストレージツール
上記に挙げたツールのうち、複数を包含するようなツールも世の中にはいくつも存在します。ただし、それらのすべての機能が必要という方は少ないのではないでしょうか。
実際、BimClip開発以前、私たちも5つ以上のツールを試運用しましたが、結局一つも浸透させることはできませんでした。それらのツールは、全体的には現在のBimClipよりも多機能な面が多かったにも関わらずです。
なぜ浸透しなかったか、それは私たちの業務には不必要な機能が多く、そのせいでわかりにくくなっていたからでした。これには理由があります。
これまで挙げたツールは、あらゆる業種における用途に適するように非常に冗長に作られていたり、こういった種類のツールを最も先進的に使っているIT業界のワークフローにフォーカスして作られていて、私たちの業務にフォーカスしていないためです。そのため、一度も使うことのない機能や耳慣れない言葉があふれたシステムになりがちです。
BimClipは私たちの関係する建設業にフォーカスし、本当に必要な機能のみにフォーカスして限りなくシンプルに作られています。そのため、社内の運用では新規採用のアルバイトや新人も、特に教育することなく使い始めることができています。
これらの効果は利用者の声にも表れています。
もう一つ、ユーザーの方から評価されている点が、社外の方とのコミュニケーションへの活用です。社内システムとしてコミュニケーションツールやファイル共有ツールを導入している会社は多くありますが、そういったシステムは社内ネットワークのみの利用に限定されるケースが多く、社外の方とのやり取りにはそのようなツールが使えていないというケースがありました。
BimClipはプロジェクトごとにページが分かれており、社外のユーザーもプロジェクト管理者が招待する形で共同でプロジェクトを編集、閲覧できます。特に多くの会社が参画する研究会などでは、高い効果を発揮する例があります。
BimClipの機能概要
機能は概要のみですが、特徴的な3つの機能および概念について簡単に説明します。
プロジェクト
BimClipでは、「プロジェクト」という単位でスペースを区切り、それぞれのプロジェクトごとに参加者を設定できます。
プロジェクトは誰でも作成することができ、社外の人でもプロジェクト管理者が招待すれば参加できます。
また、プロジェクトといっていますが、私たちの社内利用では社内会議の共有事項連絡や、技術情報の共有といった目的のプロジェクトも数多く作成されています。
トピック
メールに代わる情報共有の機能です。自由に改訂が行えるトピック本文と、それに対してチャット形式で議論できるコメント機能があります。また、トピック改訂やコメント投稿時には、任意でメール通知も行えます。
成果物
ファイル管理の機能です。過去のファイル更新履歴も保持するため、共有ファイルサーバーで上書きしてはいけないファイルを書き換えてしまった、というようなトラブルも生じません。
トピック同様、更新時に任意でメール通知することもできますので、ファイルを更新してメールで連絡、のような作業を省くことができます。
また、ファイルについてだれがいつ、どのバージョンをダウンロードしたかの情報も記録され、確認することができます。過去にダウンロードしていたファイルがすでに新しく更新されていた、という場合にもすぐに気づくことができます。
なお、機能に関しては簡単な動画も用意しています。もう少し詳細が知りたい方は是非ご覧ください。
その他の動画は以下からご確認いただけます。
BimClipを活用して分かった3つのメリット
メールよりも最新の情報に簡単にアクセスできる
メールやメーリングリストで多くの関係者に情報を共有することはこれまでよく行われていましたが、BimClipを活用し始めてからその数は大きく減りました。
メールやメーリングリストの場合、以下のデメリットがありました。
メールのデメリット
- メールが多すぎて毎回検索しないと見つけられず、目的のメールを探すのに時間がかかる。
メーリングリストのデメリット
- 話題にそこまで関係ない人もメンバーに入っている
- 議事録などを送ると、その訂正メールがいろんな人から送られてきて、どれが最新だかわからない
私たちがよく行う運用は、BimClipでトピックとして議題をまとめ、そこから必要なメンバーに通知する、という方法です。改訂が必要な場合は、直接トピックを改訂してもらえれば改訂履歴は残りつつ、閲覧者は常に安心して最新情報が得られます。
常にそこに最新情報がある、という安心感は、プロジェクト運営にとって非常に心強いものであるというのが運用した実感としてあります。
ファイルを置く→メールで知らせるの手間がなくなる
これまでは、共有ファイルサーバー上のファイルを更新し、「更新しましたので確認をお願いします」というメールを送ることが当たり前でした。当たり前のようにやっていましたが、この運用ではファイルを置くだけでメールまで含めると5分近く時間がかかることもあります。
時間を浪費するだけでなく、「面倒だからまとめてアップしよう」「これは共有しておくに越したことはないが、きりがないからやめておこう」という情報共有のロスも知らず知らずに発生していました。
BimClipを導入すると、ファイルをアップロードしつつ通知メールを送るのが自然になるため、ファイルの更新頻度は数倍になりました。
気軽なコミュニケーションや雑談が発生する
メールよりも気軽なアウトプット先ができることで、業務に直接関係なくても有用な情報を提供する人が増えました。
また、トップページに自分が所属するプロジェクトの「最近の活動」タイムラインが表示されるので、横からアドバイスをくれるような人もちらほら出てくるようになりました。
なお、これはチャットツールも併用している場合には、チャットのほうが有用な場面もあります。ただし、チャットツールだと重要な情報が流れて埋もれてしまうケースもあるので、あとに残したいような議論はBimClip、即時性が求められるコミュニケーションはチャット、という形で使い分けています。
社内利用の実態を数値で見てみる
某大規模プロジェクトにおける集計
事例として数年がかりで行った大規模プロジェクトにおける過去2年分の集計を挙げます。 このプロジェクトは、おそらく現在のところ社内で最もBimClipを活用したプロジェクトだと思います。
以下が実際の数字です。
- 累計トピック数 : 1090
- 累計コメント数 : 1952
- 累計ファイル更新数 : 1479
BimClipがなければ、トピック約1000件分の情報がメーリングリストで行われ、各メンバーが最新の情報を探すのに苦労して時間を浪費したり、情報を取り違えたりしていたと思います。
コメント2000件は、メールでやりとりされるか、もしくは手間がかかるためやり取りされなかったか、記録が残らない電話での確認になったかもしれません。
ファイル更新1500件は、共有ファイルサーバーの場合更新されないか、無駄な時間を浪費して更新していたことでしょう。また、共有ファイルを多くのメンバーで編集していたため、上書きしてしまって情報が失われたりするような事故が発生していた可能性は否定できません。
結果として、BimClipがなかったら、プロジェクトはもっと苦境を強いられていただろう、というのがメンバー全員の見解でした。
まとめ
BimClipのご紹介と、社内利用実態について集計による実態調査を行いました。
私たちの防災・減災エンジニアグループではかなり利用が浸透しており、相当の業務効率化とチームワークの向上ができていることを実感しています。
また、私たちのチームでは近年はBimClipをコミュニケーションの基点として広く活用していたこともあり、在宅勤務に移行してもそれほど大きなコミュニケーション問題は発生していません。社内にとどまらず、コミュニケーションの課題を抱える企業の方の業務を少しでも改善できればと願っております。
なお、試してみたいという方は下記のURLまたはお問い合わせフォームからその旨記載してお問い合わせください。